―第0️⃣3️⃣0️⃣話― 【運動会】我が家の戦いは、2週間前から始まっていた。
今日は、待ちに待った娘の中学校の運動会。
実はこの日を迎えるまでに、わが家では密かな——そして熾烈な「もう一つの戦い」が繰り広げられていました。
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ことの始まりは、二週間前。
スマートフォンの天気予報アプリと、にらめっこする日々でした。
画面に表示されていたのは、無情にも「雨」のマーク。毎日何度もアプリを開いては、「変われ、変われ……」と祈るような気持ち。あんなに楽しみにしている娘の顔を知っているから、余計に。
お天気の神様は最終的に娘に微笑んでくれました。
今日は五月晴れ、最高の運動会日和になりました。
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そしてもう一つの大問題が、駐車場の確保でした。
今は便利な世の中で、時間貸し駐車場を事前にネットで予約できるサービスがあります。ところが裏を返せば、それは恐ろしいほどの予約争奪戦を意味します。
全校生徒500人。対して、学校近くの予約可能な駐車場はわずか50台ほど。
私たちの運動会は、競技が始まるずっと前から、スマホの画面越しにすでに幕を開けていたのです。
去年は、あえなく敗北。トボトボと遠くのコインパーキングから歩いた、苦い記憶があります。
しかし今年は——勝ちました。
深夜0時のゴングと共に、苛烈な予約サイトへのアクセス。
500家族が一斉にアクセスしているのでしょう。なかなか進まない登録画面。
しかし、勝利の女神は私たちに微笑んでくれました。
フリーズする画面の一瞬の静寂を乗り越え、見事に予約権を確保。
深夜にも関わらず、思わず家の中で小さくガッツポーズをし、美酒に酔ったのは私だけの秘密です。
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今朝、娘を学校まで送る車の中のこと。
少し緊張した面持ちの娘が、ぽつりぽつりと話してくれました。
「二年生の団体競技は大縄跳びでね、やっとみんなの息が合い始めたんだよ。昨日、ギリギリになって急に記録がすごく伸びたの。だから今日、絶対にその成果を出したいんだ」
今時の中学生、クールに構える子が多いのかと思っていました。でも娘の言葉の端々から、クラス全員が同じ熱量で今日に向かっていることが、ありありと伝わってきました。
娘の学年は、先生たちからも「稀に見る団結力」と太鼓判を押されているそうです。
きっと何年後か、大人になった彼女たちが同窓会で集まったとき、「あのときの大縄跳び!」と昨日のことのように笑い合うのでしょう。そんな未来の景色まで想像して、運転しながら少し胸が熱くなりました。
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実は私、昔から運動がからっきし苦手で、学生時代の運動会といえば憂鬱以外の何物でもありませんでした。
でも。
こんなに嬉しそうに、誇らしそうに前を向く娘の横顔を見ていると——あんなに嫌いだった運動会が、今日だけは少し好きになれる気がするのです。
子どもに、新しい景色を見せてもらう。
親業の醍醐味は、きっとこういうところにあるのだと思います。
さあ、あとはハンカチを忘れずに。泣くのは日焼け対策のあとで。
勝利の駐車場へ、いざ出発です。




