―第0️⃣0️⃣3️⃣話― 図書館は宝の山。おとなになって手に入れた、贅沢な不自由。
本好きにとって、私の今の住まいは、この上なく恵まれています。
なぜなら、市の図書館が歩いて5分の場所にあるから。
そこは総合図書館のような立派な規模ではありません。
児童館と併設された、こぢんまりとした小さな図書館です。
けれど、歴史を感じさせる古い文献から、最新の児童向け小説まで。
背表紙を眺めているだけでワクワクするような、
一通りのラインナップが揃っています。
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私は、自他ともに認めるその図書館の「常連」です。
一度に借りられるのは10冊、期間は2週間。
隅から隅まで読み耽りたいのは山々ですが、そこは大人の分別。
自分のスケジュールと相談しながら、
必要な冊数だけを厳選して借りるのが私のスタイルです。
ふと、この図書館に通い始めた頃のことを思い出します。
当時はまだ小さかった、二人の子供を引き連れて。
子供たちに「好きなの選びなさい」と言うと、
あっという間に私の貸出枠は埋まりました。
配分は5冊ずつ。
そう、私のカードは子供たちの本でいっぱいになり、
私自身の本を借りる余裕なんて、どこにもなかったのです。
――――――
子供たちが迷いながら本を選んでいる、その束の間の時間。
私は書棚の間で、かいつまむようにして「立ち読み」をしていました。
その感覚は、どこか懐かしいものでした。
小学生の頃、夢中で市の図書館に通い、
「この本、もう読んだっけ?」と確認しながらページを素早くめくっていたあの頃。
限られた時間の中で、必死に物語を追いかけていた少年時代の自分と、
親としての自分が重なるような、不思議な時間でした。
――――――
今は、自分のカードで贅沢に10冊借りることができます。
それなのに、今回借りたのは、たったの3冊。
大人になるということは、責任が増えるとともに、
自分だけの時間が削られていくことなのかもしれません。
10冊借りる自由はあっても、それを読み切る時間は、
かつての立ち読みの時間よりも貴重なものになっている。
それでも。 せめて、自分が物語を書き、キーボードを叩く時間だけは。
どんなに忙しくても、大切に守り抜いていきたい。
そう思いながら、今日借りた3冊を大切に抱えて、図書館を後にしました。




