―第1️⃣0️⃣7️⃣話― 【B級映画魂】アフリカン・カンフー・ナチス——我が家にも、独裁者が。
私には、人に言うほどではないけれど、つい、やってしまう癖のようなものが、いくつかあります。
その一つが、モノマネ。それも、なかなか通好みのやつを、密かに練習しているのです。
■ 我が家の、モノマネ・レパートリー
まずは、「はちみつ、たべたいんだなぁ〜」でおなじみ、くまのプーさん。
これが、我ながら、よく似ている。子どもたちも、認めたくはないけれど、似ていると思っている。それが分かっているから、ついつい、やってしまう。ディズニーランドで「プーさんのハニーハント」に乗れば、終始、プーさんの声で語りかける。小学校の頃までは、乗ってくれていましたが……今は、けちょんけちょんに、怒られます。
続いて、「はたして〜、孫悟空の戦いはいかに!」でおなじみ、『ドラゴンボール』のナレーション。界王様の声でも知られる、八奈見乗児さんです。特徴的な「はたして〜」「〜いかに!」を使って、子どもたちに話しかける。「はたして〜、お母さんのご機嫌はいかに!」なんて言って、からかう。もちろん、妻からは、大目玉です。
そして、「ぶわっはっはっは〜、吾輩は!」でおなじみ、デーモン木暮閣下。低い声と、少し高いトーンの声が出るので、あの独特の声色に、近い声が出せる。ただ、これは今やっても、子どもたちが本人の声を知らないので、通じない。小さい頃は、単なる面白い声として、受けてくれたのですが。今やると、妻から「平成やね。それも、初期」と、冷たくあしらわれます。
■ 本命は、若本規夫さん
そんな私が、最も多く練習し、最も多く、今でも家族の前で披露しているのが——「ふ〜ぐたく〜ん」「すべらな〜い、はなし〜〜!」でおなじみ、若本規夫さんです。
語尾を「〜〜〜ぅお」や「〜〜るぁ」と、巻き舌気味に、ビブラートを利かせる、あの独特の発声。応用できる台詞が多いので、至るところで使えます。子どもたちからすると、「あ、また始まった」と、完全なスルー案件。ですが、私は、やっているだけで、似ている・似ていないに関わらず、気持ちよく声が出せるので、ついつい、やってしまう。というか、そもそも、若本さんのことが、大好きなのです。
■ 本日の、奇跡
そんなわけで、YouTubeを見ていると。私が検索窓に「若本規夫」と打ち込むものだから、ご本人以外の、モノマネやネタ動画まで、アルゴリズムが、どんどん引っ張ってきます。
その偶然が、本日、奇跡を呼びました。
私の全く知らない映画が、「若本規夫さんがナレーションを担当した」ということで、予告編が、おすすめに出てきたのです。
その名も——『アフリカン・カンフー・ナチス2 逆襲のロボトラー』。
どうやら、こういう話らしい。生き延びていたヒトラーが、東條英機とともに、ガーナへ亡命。なぜか、空手と魔術的パワーで、地元の人々を「ガーナ・アーリア人」に洗脳し、支配しようとする。そうはさせるかと、カンフーで立ち向かう——という、はちゃめちゃな一作目が、好評だったのか(?)、作られたのが、この続編です。
前作で殺されたはずのヒトラーが、なぜか復活して、ガーナの大統領選挙に、出馬。在ガーナ日本大使(なんと、元力士が演じる「雷電」というキャラです)を後ろ盾に、最有力候補へと躍り出る。今回もカンフーで、なんとか倒そうとすると——ヒトラーは、巨大ロボット「ロボトラー」へと、トランスフォーム!
もう、はちゃめちゃが過ぎて、たまりません。その予告編のナレーションを、若本さんが、情感たっぷり、間たっぷりに、語っているのです。
■ 息子を、誘う
私の数ある趣味の一つ、B級映画魂に、火がつきました。
調べると、プライムビデオで、有料配信されているよう。これは、見るしかないでしょう。こんな迷作、一人で見るのは、もったいない。私は、息子を誘います。
「むすこくぅ〜んっ。い〜っしょにぃ〜、えいがぁ〜を、ん〜みないかぁ〜いっ!」
若本節で誘い、そして、映画の内容を説明します。すると、息子。
「お父さん。一ついい? 我が家に、独裁者、いるんだよ。わざわざ見る必要ないよ。ぼく、パス」
「そぉ〜んなことぉぅ〜っ、いわなぁ〜いで〜っ!」
面白がって、なおも誘いをかけます。息子も、案外、嫌がらずに、しばらく付き合ってくれていたのですが。急に、つれなくなりました。
「ぼ、ぼく、勉強途中だから。ごめん、お父さん」
せっかく、ノリノリで、息子とのコミュニケーションを楽しんでいたのに。残念です。
■ 我が家の、独裁者
仕方がないので、娘を誘おうと、振り返った、その時。
そこに——鬼の形相の、妻が、いました。
……なるほど。
我が家では、独裁者はロボットにはトランスフォームせず、鬼にトランスフォームするようです。
さて。一人で今から、見るとしますか。




