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めこねこの日々のあれこれ  作者: めこねこ


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108/121

―第1️⃣0️⃣8️⃣話― 【母と娘】仲直りは、握手一つ。そして……父の、空回り。

このところ、娘が、私によく話しかけ、一緒に散歩に出かけます。


娘の将来を、あれこれ考え、アドバイスをし、手伝いながら、一緒に体を動かしたりもしている。だから、話しかけてくるのだろう——そう受け止めていましたが。どうやら、それだけでは、なかったようなのです。


理由は、もう一つ。母と娘の、ケンカでした。



■ 板挟みの、聞き役


妻は、まあ、我が強いお人です。結婚して、うん十年。私は、それを踏まえて、うまくやってきました。良い時も、あるんです。……悪い時のほうが、多い気もしますが。


ただ、子どもたちからすれば、母との付き合いは、まだ十五年ほど。それも、物心……いえ、思春期に入ってからの、この五年ほどの向き合い方には、なかなか、思うところが、あるようなのです。


些細なことで起こる、母と娘の行き違い。どちらが悪い、悪くない、という話でも、ありません。どちらの言い分も、生きている。だからこそ、一方を悪く言うことは、できません。そして、片方がいない時に、もっぱら、聞き役になるのが——この、私、というわけです。



■ 母の、言い分


「最近ね、娘ちゃんと、口きいてないのよ」


妻が、切り出します。私は、とうに知っていますが、あえて黙って、話を聞きます。


「でも、私は、悪くないからね」


……ああ、ここからか。そう思いながら聞いていると。自分は悪くない、と言いつつ、そろそろ関係を修復したい——その気持ちは、伝わってきます。


「少なくとも、娘ちゃんだけが悪くないんだから。もうちょっと理由を考えたら」


妻は、憮然としていましたが。まあ、私に言えるアドバイスも、それくらいのものです。



■ 娘の、言い分


「お母さんとさ、口きいてないんよね」


娘からも、同じ話が、やってきます。知っています。ずっと話していないのも、妻から聞いてますし。


「私、あの態度が、嫌なのよね。自分が中心、って感じ」


まあ、そこは、認めます。ですが、それは、不器用な母の、言葉でもある。そこで突っぱねていても、解決は、しません。


「お母さんは、そういう性格だって思って。向き合うしか、ないんじゃないか」


ガス抜きは、私がするとして。簡単には変わらない性格は、受け入れてもらうしか、ないのです。



■ 旅行前の、膠着


それから、二日。進展のないまま、時間が過ぎます。


ただ、あと二日もすれば、ちょっとした日帰り旅行に行こう、という日が、近づいている。母も娘も、一緒にウィンドウショッピングでもしたい、と思っているようです。特に娘は、母のマニキュアを借りて、少しおしゃれをしたい、という魂胆も、あるらしい。


散歩の途中で、言ってみます。


「そろそろ、仲直りしたら」

「したくても、ね。お母さんの、あの態度がね」

「とりあえず、マニキュア塗りたいって、言ってみたら? きっかけに、なるよ」

「ん〜」


散歩から帰り、娘が風呂に入っている間に。今度は、妻に、切り出します。


「そろそろ仲直りしないと、せっかくの日帰り旅行が、つまらなくなるよ」

「だって、私の話なんて、聞かないもん」

「そこを曲げて、大人になるのが、親でしょ」

「ん〜」


……さてさて。この分では、今日の進展は、望めそうにないな。そう思いながら、私は書斎に引き上げ、その日は、終了となりました。



■ まさかの、仲直り


翌朝。改めて、妻に言います。


「今日こそ、仲直りしなきゃね」

「もう、したよ。何言ってんの」

「へ?」


……昨晩。私が書斎に引き上げた、あとに。二人だけで、あっさり、仲直りしていたようです。


私の、あの奔走は、いったい、何だったのか。


さて。妻がパートに行ったあと、私は在宅なので、娘が起きてくるのを待ちます。少し遅めに、起き出してきました。早速、聞きます。


「お母さんが、仲直りしたって言ってたけど」

「ああ、確かに。……ただ、ね」


どうも、娘の歯切れが、悪い。


「私がお風呂から出てきたら、お母さんが手を差し出してきて。『そろそろ仲直りするよ。ほら、握手』って。……とりあえず、それで、終わった」


なんとも、言えませんが。これが、妻なりの、仲直りの作法だったのでしょう。


娘は、完全には納得していない様子。ですが、その顔は、少しだけ、スッキリしても見える。これも、母と娘の関係か、と、見ておりました。



■ 雨降って、地固まって


その後。パートから帰ってきた妻と、娘は、他愛もない話をしながら、お菓子を、ぱくついています。仲良く、アイドルの話なんか、しながら。


……さて。今日の、私との散歩に。娘は、ついてきて、くれるのでしょうか。


もう少し、妻とケンカしていてくれたら。私との時間も、続いたのですが……。まあ、仕方がありません。


雨降って、地固まる。母と娘の仲は、めでたく、元通り。そして、あぶれた父は——。


諍いのない、朴念仁の息子のところへ。今日も、ちょっかいを出しに、行くとします。

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