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めこねこの日々のあれこれ  作者: めこねこ


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―第1️⃣0️⃣6️⃣話― 【娘の夏】娘の絵柄——自分の道を、見つけて。

娘が毎日、パソコンの前で、液タブに向かっています。


夏休みの宿題は、ほぼ終わらせ。最近は、午前中に英検の勉強などの予習をして、昼からは、ずっと液タブを操作している。画面を見せてはくれませんし、こちらも、あえて見ないようにしているので、詳しい中身は分かりませんが。やはり、マンガの制作を、進めているようです。


親としては、どこまで進んでいるのか。知りたいような、知ってはいけないような。そんな気持ちで、そっと、見守っていました。



■ 娘の、絵の歴史


そんなとき、です。


二階の書斎でのポチポチに疲れて、階下のリビングに下りたとき。娘の液タブのそばを通ると、なんとなく、私に見せるように、画面を開いていました。


そこに描かれていたのは——今まで見てきた、どの絵とも違う、新しい絵だったのです。


……と、こう書いても、想像しにくいですよね。少し、言葉を補います。


小学校の低学年の頃、娘が描いていたのは、いわゆる「ザ・今風少女漫画」の女の子でした。顔の半分くらいが、目。まつ毛はバーン、二重はバッチリ。まあ、女の子の絵として、ごく当たり前の。可愛らしい女の子を、いくつも、描いていました。


高学年になると、テレビアニメや、有名な漫画家のイラストを模写したり、そのキャラクターに、自分なりのポーズを取らせたりし始めました。この頃から、私たちも「ちょっと、この子の絵、すごくない?」と思い始め、学校でも、先生や友達の間で、目立つようになってきたのです。



■ ぶつかっていた、壁


その娘が、中学生になると、イラストではなく、マンガを描くほうへと、移っていきます。


ただ、どうも、悩んでいるところがあるらしいことは、少し、気づいていました。多少の動きは描けても、自分の描きたいキャラクターの精度を保ったまま描くのが、難しくなってきたようで。描きかけのスケッチブックが目に留まると、なんとなく、同じ角度の顔や体ばかり、描いているな、と。


それが、です。


液タブで、本格的にマンガを描き始めて、四日ほど。


いや、びっくりするような絵でした。簡単に言うと——少年漫画に載っていそうな、ちょっと個性のあるキャラクターが、カラーで、活き活きと描かれている。


え。ついこの間までの、キラキラした少女たちは、どこへ。


あまりに意外で、私は、思わず、声をあげてしまいました。



■ 娘が、語った


いつもの娘なら、絵を見られること自体には、さほど言いませんが。それを口に出すと、とたんに、不機嫌になります。


ところが、今回は、違いました。少し自慢げに、「ここをこう工夫した」「こういう機能を探して、色を塗ってみた」と、語ってくれたのです。


あまり干渉しすぎると、機嫌を損ねてしまうかもしれない。ですから私は、「すごい、上手いよ」「びっくりしたよ」くらいの言葉に留めて、そのまま、書斎に上がりました。



■ 二人の、散歩


そして、今日です。


私が、例のダイエット大作戦の一環で、夕食後のウォーキングに出かけようとしたとき。


「お父さん、私も一緒に歩くよ」


娘から、声をかけてきました。もちろん、私は、イエスです。


道々。普段はあまり喋らない娘の、小学校のとき以来の、お喋りが始まりました。学校のこと。友達のこと。そして、今描いている、マンガのこと。


さすがに、あまり踏み込むのもと思い、私は、こう切り出しました。


「いや、昨日見た絵。今までと違う絵柄で、びっくりしたよ」


娘は、ニヤリと笑って、その理由を、語り始めました。


「私ね。今まで描いてた、少女漫画らしい女の子の絵。なんか、違うと思って」


やはり、これまでの絵柄に、思うところがあったようです。


「何より、男の子の絵が、描けなくって。どうしようって、思ってたんだよね」


女の子だけでなく、ほかの絵にも、引っかかっていたらしい。


「で、『DEATH NOTE』を描いてる、小畑先生の絵を見て。これだ、って思ったの」

「それから、なんか、方向性が見えてきて。あんな絵に、なったんだ」



■ 娘の背中を、見て


いや、そう言われたら、確かに、そうかもしれません。


娘は、絵画教室で、クロッキーを描いています。どうも、誰よりも早く、被写体を捉えて、サクッと描くことができるらしい。要は、写実的に描くことに、長けたところがある。


なのに、デフォルメの極みの一つである、少女漫画風のキャラクターを、無理に描いていた。そこへ、小畑先生の、写実的でリアルな絵柄が、目に飛び込んできた。自分の目指すべき方向は、こっちだ、と。そう、掴んだようなのです。


娘は、自分の進むべき道を、しっかりと掴んで、まっすぐに、進んでいます。


ひるがえって、私は、どうでしょう。この歳になっても、何を書きたいのか、何を目指しているのか、分からないまま。あちらこちらに浮気をしながら、書いている。


親の背中を見て、子は育つ——と言いますが。我が家では、どうやら、娘の背中を見て、親のほうが、育つのかもしれません。


いや。それとも。いまだ宿題の終わりが見えない、あの息子と二人。娘の爪の垢でも、煎じて飲むことに、いたしましょうか。

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