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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
中学時代編

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崩壊

注:自傷描写あり 

自傷行為を推奨するものではありません。

「親からもらった身体を~」なんてテンプレじみたことを言うつもりはありません。あなたの身体はあなたの物です。

しかし、自分の身体は何よりの財産です。大切にしてあげてください。

自分で自分を傷つける前に、本当にそれしか方法が無いのか、一度立ち止まって考えてみてください。

12月に入り、冬の空気が街を覆うようになった頃、柊の世界は静かに、しかし確実に崩れ始めていた。


受験勉強はピークを迎えていた。

机に向かう時間はさらに長くなったが、模試の結果は停滞気味だった。

そんなことは知らない周りの人からは「柊なら絶対大丈夫だよ」と声をかけられるようになったけど、柊はその言葉を信じられなかった。


「最近、偏差値が伸び悩んでる…」「本番は一回のミスで全部終わり…」「俺なんかじゃ、もう伸びないのか…?」「こんなに勉強しても、ダメなのか…?」


不安は夜ごとに膨らみ、睡眠時間を削る悪循環を生んだ。

目が冴えて眠れない夜は、天井を見つめながら瑶季のことを思い浮かべる。

瑶季とのLINEは、最大の癒しだった。瑶季と話しているときだけは、全ての不安を忘れてただ楽しく会話できた。

でも、互いに受験生だから、勉強の話以外では自分から送るのを控えていた。

「瑶季の邪魔にならないように…」

そんな理性が、かえって孤独を深めていく。


運動不足も深刻だった。

部活引退後、体はどんどん重くなり、3回の教室へ行くために階段を上るだけで息が切れる。

たまに身体が疼いて仕方がないときは、バレーボールを握って公園に行き、壁に向かって何度もスパイクを叩きつける。

ボールが跳ね返る音が、ストレスを少しだけ発散させてくれる。

でも、それだけじゃ足りない。

跳びたい。レシーブしたい。ブロックしたい。ブロックの上を抜き、レシーバーを弾き飛ばして得点した時の快感が忘れられない。1度負ければ終わりという試合の緊迫感の中で、エースとしてチームを勝たせてきたあの喜びが遠い過去のように感じる。


ゲームの封印も、胸に空洞を残していた。

コントローラーを握りたい衝動が、勉強中にフラッシュバックのように蘇る。

これまでの人生、ゲームとバレーだけが「俺の居場所」だったのに、今は何もない。

空虚が、心の隙間を埋め尽くす。


12月半ば。

ついに、柊の心は限界を迎えた。

最初は、物に当たるだけだった。

公園の壁にバレーボールを全力で投げつける。

「ドン!」という衝撃音が、胸のモヤモヤを一瞬だけ吹き飛ばす。

誰もいない場所を選ぶなど、人に迷惑をかけないという最低限の良心はまだ働いていた。

でも、次第にエスカレートした。

学校の裏側、人目につかない壁を拳で叩く。

自室で、枕や壁を殴りつける。

音が出ないように拳にタオルを巻きつけて何度も壁に叩きつけた。

痛みが来るまで叩き続け、赤くなった拳を見て「これで少し楽になる…」と思う。

でも、それでも足りない。

頭を壁に打ちつけるようになり、額に青あざができる。

「痛い…でも、この痛みの方がマシだ」

精神的な苦しみから逃れるために、物理的な痛みを求めるようになった。

痛みがあるうちは、受験の不安や孤独感を忘れられた。精神的という目に見えない辛さが、痛みという目に見える、感じやすい辛さに変わったことで、苦しみの原因が分かったようで楽になった。


そして、ついに自傷へ。

ある夜、勉強机の引き出しからカッターを取り出した。

腕の内側に、浅く刃を当てる。

血がにじむのを見て、胸のざわつきが一瞬止まる。

「これで、不安を忘れられる…」

次は脚。太ももの内側を、短く切りつける。

痛みが脳を支配し、受験のプレッシャーや瑶季がいない孤独感が、遠のく。

瑶季の笑顔を思い浮かべながら、でも瑶季に言えないこの行為を繰り返す。


「瑶季と話したい……けど、勉強の邪魔をするわけにはいかない…迷惑はかけられない……

俺が耐えればすむ話だ……」

「瑶季と同じ高校に行きたいけど……俺、こんなんじゃ瑶季の近くにいる資格無い……」


涙が混じり、傷口に染みる。

でも、止まらない。

一時的な逃避が、癖になっていく。


瑶季とのLINEは、まだ続いていた。

勉強の相談や、たまのバレー話。

瑶季は「柊くん、最近声が疲れてるみたい…大丈夫?」と心配のメッセージを送ってくる。

しかし柊は「大丈夫、ただ勉強詰めすぎて少し寝不足かも……瑶季も無理はしないでね」と返すだけ。

本当のことは、言えない。

瑶季を巻き込みたくない。

でも、心の奥で思う。

(瑶季がいなかったら、俺もう壊れてるかも…)


このままでは、柊はさらに深みへ沈むかもしれない。

年末の模試が近づき、ストレスはピークに。

柊は周りに迷惑をかけるわけにはいかないという一心で、全てを隠し続けた。

瑶季にさえ、いや、大切な友人となった瑶季だからこそ話せなかった。


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