同窓会
社会人3年目の冬、12月半ば。
柊のスマホに、中学時代のクラスLINEから「同窓会のお知らせ」が届いた。
「みんな元気? 3年ぶりに集まろうよ〜!
今回は家族・恋人OK! 子ども連れも大歓迎!
日程:12月28日(土)18時〜
場所:地元の居酒屋『魚民』」
柊は一瞬、画面を見つめて固まった。
中学卒業から約8年。
瑶季とは大学4年のあの夜以来、連絡も会うこともない。
理央とはもう2年近く付き合っている。
同窓会に行けば、瑶季に会う可能性が高い。
でも、行かない選択肢は……なかった。
「行かないと、過去を避けてるみたいで嫌だ」
そんな気持ちが、柊を動かした。
理央に相談すると目を輝かせて
「行く行く! 私も行く!柊くんの元カノに会えるなんて、楽しみ〜♡」
と即答。
「…元カノじゃないよ。友達……だっただけ」
と苦笑いしたが、
「ふふ、じゃあ私、柊くんの彼女として堂々と行くね!」
と笑った。
12月28日、土曜日。
地元の居酒屋『魚民』の個室。
20人くらい集まった同窓生たちは、すでにビールで盛り上がっていた。
柊と理央が遅れて入室すると、一瞬、場が静かになった。
「あれ……柊くん!?」
「え、隣の子誰!?」
「瑶季ちゃんじゃない……!?」
級友達の視線が一斉に柊と理央に集まる。
中学時代、みんなは「柊と瑶季は付き合ってるも同然」と思っていた。
体育祭のセンター写真、毎日のLINE、クラスでの距離感……
だから柊の隣に瑶季がいないことに、全員が驚きを隠せなかった。
「え、瑶季ちゃんは……?」
「まさか別れたの!?」
「いや、柊くん彼女できたの!?」
柊は苦笑いしながら、
「瑶季とはそもそも付き合ってたわけじゃないし……もう連絡取ってないよ。
こっちは理央。俺の……彼女」
と紹介した。
理央は
「初めまして〜! 理央です!柊くんの話、よく聞いてました♡よろしくお願いします!」
と、いつもの明るさで頭を下げた。
一同は
「ええ〜! めっちゃ可愛いじゃん!」
「柊くん、こんな子ゲットしたの!?」
と大騒ぎ。
理央は
「柊くんが毎日『理央〜』って甘えてくるんですよ〜(笑)」
と冗談めかして言うと、さらに盛り上がった。
そのとき、店の奥から瑶季が現れた。瑶季は少し大人っぽくなった。
髪は肩より少し長く、メイクもナチュラルだけど、中学の頃の可愛さがそのまま残っている。
瑶季は柊と理央を見て、一瞬固まったあと、
「柊くん……! 久しぶり!」
と笑顔で近づいてきた。
柊は
「……久しぶり、瑶季」
と、声が少し掠れた。
瑶季は理央を見て、
「え、この子、彼女さん?めっちゃ可愛い! 初めまして、瑶季です!」
と手を差し出した。
理央は笑顔で握手して、
「初めまして〜! 理央です。柊くんから、瑶季さんの話よく聞いてました♡
中学のとき、めっちゃ仲良かったんだよね?」
って、明るく返した。
瑶季は
「うん! 柊くんとは、毎日話してたよね〜。あの頃、ほんと楽しかったな……」
と、少し懐かしそうに笑った。
でも、柊と理央が並んでいるのを見て、
「今は幸せそうだね、柊くん。よかった……」と、優しく言った。
柊は
「……うん。瑶季も、元気そうでよかった」
とだけ返した。
言葉が詰まる。
あの夜の記憶が一瞬だけ蘇るけど、すぐに理央の手を握る感触で、今に引き戻される。
宴会が進むと、みんなが
「柊と瑶季の昔話聞かせてよ!」
と冷やかしてくる。
瑶季は
「えー、恥ずかしいよ〜!でも、柊くん優しかったよね。勉強教えてくれたり、体育祭で頑張ってたり……」
と笑いながら話す。
理央は
「へえ〜! 柊くん、そんな時代もあったんだ(笑)」
ってからかうけど、柊の手を握って、
「今は私が一番知ってるよ♡」と、さりげなく牽制。
瑶季は
「柊くん、理央ちゃんのこと大事にしてるよね。見ててわかるもん」
って、優しく笑った。
宴会の終わり、瑶季が柊にだけ小声で
「柊くん、幸せそうでほんとに良かった。あの夜のこと……ごめんね。
勢いだったけど、私も、柊くんのこと忘れてなかったよ」
って言って、軽く手を振って帰っていった。
柊は瑶季の背中を見送りながら、理央の手を強く握った。
理央は
「瑶季さん、いい人だね」
って笑って柊の肩に頭を預けた。
柊は
「……うん。でも、今は理央がいるから……俺、幸せだよ」
と、初めて心から言えた。
この同窓会が、柊にとって瑶季との「最後の清算」になった。
そして、理央との未来がさらに確かなものになった。




