報告
理央と正式に付き合い始めてから数日後、迷いに迷った末に海月先輩に連絡を取ることにした。
相談に乗ってもらった身として、「報告する義務がある」という気持ちが、強く胸にあった。
海月先輩は、柊の「好きになりすぎる」性質を知っている人。
理央への想いを話したときも優しく、でも冷静に聞いてくれた。
だからこそ、「付き合い始めた」という結果をちゃんと伝えておきたかった。
LINEのトークルームは、理央への誕生日プレゼントの相談した以来、数ヶ月ぶりに開かれた。
スマホを握りしめて、深呼吸を繰り返した。
柊
『海月さん、お久しぶりです。
前に相談に乗ってもらったことなんですが…
理央と、正式に付き合い始めました。
先輩に相談したことが、俺に勇気を与えてくれたんだと思います。
本当に、ありがとうございました。
今も、時々先輩からもらった腕時計見て、あの頃の自分を思い出します。
またいつか、機会があれば会えたらいいなと思います』
送信した瞬間、胸が少し軽くなった。
でも、同時に、「先輩はもう、俺の日常にいない」という実感が静かに胸を刺した。
海月からの返信は、翌日の昼に届いた。
海月
『柊くん! おめでとう!!!!♡♡
理央と付き合ったんだね〜!!
あのとき相談してくれたとき、柊くんの本気度が伝わってきて私も本気で応援したかったんだ。
やっぱり理央、最高の選択だったね♡
柊くんはほんとに真っ直ぐで優しいから、理央を幸せにしてあげてね。
私も、柊くんの幸せ、遠くから祈ってるよ〜!
腕時計、まだつけてくれてるんだ……
なんか、泣きそうになった(笑)
私の方は、仕事とか順調だよ。
また機会あったら、
みんなで飲みに行こうね!ありがとう、柊くん。
これからも、幸せになってね♡』
メッセージを読んだ瞬間、柊の目から涙がぽろりと落ちた。
海月先輩は、変わらず優しかった。
でも、その優しさはもう、「過去の優しさ」だった。
先輩は俺の幸せを、心から願ってくれている。
それが、嬉しくて、切なくて、でもどこかで、「ありがとう、先輩」と心から思えた。
柊はスマホを胸に当てて深く息を吐いた。
理央にこの報告をしたとき、
「海月さん、やっぱり優しい人だね……柊くん、ちゃんと区切りつけられたんだ」
って、そっと抱きしめてくれた。
柊は
「……うん。理央がいてくれたからだよ」
と、理央の背中に顔を埋めた。
理央と付き合ってからの日々は、穏やかで、温かく、少しだけ、普通の幸せだった。
でもそれが、柊にとって一番の宝物になった。




