告白・②
理央の部屋はいつものように柔らかい照明で、テーブルの上には空になったビールの缶が3本と、半分残った日本酒の瓶が転がっていた。
時計はもう23時を回っている。
普段ならここで「そろそろ寝よっか」と切り上げる時間なのに、今日の柊は明らかに様子がおかしかった。
グラスを握ったまま、柊は黙ってビールを煽っている。
いつもよりペースが早い。
目が少し虚ろで、表情が暗い。
理央は隣で膝を抱えながら、チラチラと柊の横顔を窺っていた。
「……柊くん」
理央が静かに声をかけた。
缶をテーブルに置いて、柊の方に体を寄せる。
「今日、なんか変だよ。いつもより飲むペース早いし……顔、暗い。何かあった?」
柊はグラスを止めて、少し間を置いた。
喉が詰まるような沈黙のあと、酒の勢いもあってか、ぽつりと本音が零れた。
「……理央、俺……理央のこと、好きだ」
一瞬、部屋が静まり返った。
理央の目が少し大きく見開かれる。
柊はすぐに顔を覆って、
「…ごめん、忘れて。酔ってるだけだから……」
と慌てて取り消そうとした。
声が震えていて、耳まで真っ赤だ。
でも、理央は動かなかった。
代わりに、ゆっくりと笑った。
嬉しそうな、どこかホッとしたような笑顔。
「……やっと言ってくれた」
柊は顔を覆った手を少しずらして、泣きそうになりながら理央を見た。
理央はグラスを置いて、柊の目を見つめながら、静かに続けた。
「とっくに気づいてるよ……バカ」
柊の息が止まる。
理央は少し照れくさそうに髪を耳にかけて、
「私も、いつの間にか好きになってた。いつからかは分からない……
でも、柊くんが海月先輩のこと引きずってるときから、なんか胸がざわついてた。
柊くんが辛そうにしてると、『私がそばにいてあげたい』って思ってて……
でも、私から言ったらプレッシャーになるかもって思ってた。
だから、柊くんから言ってほしくて……待ってたの」
理央の声が少し震える。
「やっと言ってくれたね。お酒の力が無いと言えないのは、ちょっと意気地なしかもだけど……
けど、勇気出して伝えてくれて、ありがとう」
理央はそう言って、柊の手をそっと握った。
柊の指が理央の指に絡まる。
2人の手が、静かに重なり合った。
「……理央……」
掠れた声で呼んだ。
理央は「うん」って頷いて、
柊の肩に頭を預けた。
「これから、どうなるかわからないけど……
とりあえず、今日はこのままでいいよね?ゆっくり、考えよう」
「……うん」
理央は柊の肩を抱き寄せた。
2人はそのまま、静かに寄り添った。
部屋には、2人の呼吸だけが響く。
この夜、柊は初めて、「好き」を言葉にできた。
理央も初めて、自分の気持ちを認めた。
まだ付き合うという形にはなっていない。
でも、2人の間には、新しい扉が開いた。




