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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
中学時代編

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勉強会

柊と瑶季の初めての「勉強会」は、瑶季の家の近くにあるファミレスで始まった。

土曜日の午後、塾での自習を早めに切り上げた柊が少し早めに着いて席を取っておくと、瑶季が少し息を切らして入ってきた。

「ごめん…待たせた?」

「いや、全然。俺も今来たばっかだから」

柊はそう言って、向かいの席を空けた。

最初は数学から。

瑶季が持ってきたノートに、関数と二次方程式の混在問題がびっしり。

柊は塾で教わった「グラフの増減表を先に作ってから解く」テクニックを、ゆっくり説明しながら自分のノートに書き写す。

瑶季は「へぇ…そうやって見ると繋がりがわかる!」と目を輝かせて、すぐに自分で解き始める。

柊が隣で「ここ、符号間違ってるかも」と指摘すると、瑶季は「あっ、ほんとだ! ありがとう!」と笑う。

次第に教科は広がった。

英語の長文読解で瑶季が「この段落の主旨が全然掴めない…」と言うと、柊は「ここは因果関係のキーワードを探すと楽だよ」と、線を引きながらアドバイス。

社会の日本史で年号が覚えられないと言うと、柊は「流れで覚えると楽になるよ。たとえばこの出来事の前後に何が起きてるか」って、簡単なマインドマップを即席で書いて見せる。

瑶季は「柊くん、頭の中どうなってるの? 全部繋がってるみたい…」と感心しながら、どんどん質問を投げてくる。


休憩でドリンクバーに行ったとき、瑶季が急に小さな声で言った。

「…ねえ、柊くん。今日、私の勉強ばっかり手伝ってくれてるけど…柊くんの勉強時間、奪ってない? 迷惑じゃない…?」

柊はココアのカップを置いて答えた。

「全然。むしろ、教えるってのもすごく良い勉強になるんだよね。

自分でわかってると思ってたところを、言葉にすると理解が深まるっていうか…。瑶季が『わかった!』って顔するの見ると、なんか達成感あるし」

瑶季は少しホッとしたように笑って、

「そっか…よかった。じゃあ、遠慮なく頼っちゃうね」

と言った。

その後も、2人は自然と時間を忘れて勉強を続けた。

瑶季の長所(国語の読解力や英語のリスニングのセンス)を伸ばすために、柊が「この長文、声に出して読んでみて」と促すと、瑶季は少し恥ずかしそうにしながらも素直に読む。

柊は「発音いいね。リスニングで有利だよ」と褒めると、瑶季は照れ笑いしながら「フルートやってたからかな…」と返す。

そんなやり取りが、ただの「勉強」以上の何かになっていく。


夕方6時近く、窓の外がオレンジ色に染まり始めた頃。

瑶季が「今日は本当にありがとう。なんか、1人でやってたときよりずっと頭に入った気がする」と言う。

柊は「俺も楽しかったよ。また誘って」と返した。

別れ際、瑶季が振り返って、

「柊くんといると、なんか安心する。…またね!」

と手を振って去っていった。柊は駅に向かう道を歩きながら、ふと思う。

(瑶季といる時間、確かに楽しい。頼られてる感じも、嫌じゃない。あぁ…これが、友達ってやつだったな)

まだ恋愛感情なんて言葉は出てこない。

ただ、瑶季の存在が、柊の毎日に小さな灯りを灯し始めていた。

受験の不安は相変わらず胸に重くのしかかっているけど、

瑶季との時間が、その重さを少しだけ分散させてくれる。

「俺なんか…」の呪文は、まだ消えない。

でも、瑶季の前では、少しだけ声が小さくなっている。

この関係は、まだ「友達」の域を出ない。

でも柊にとって、瑶季は確実に「大切な人」になりつつあった。



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