理央のプレゼント
3月12日、柊の誕生日。
朝、スマホの通知が鳴った瞬間、柊はベッドの中で体を起こした。
まだ寝ぼけ眼のまま画面を確認すると、理央からのメッセージが届いていた。
理央
『柊くん、お誕生日おめでとう!!
社会人1年目お疲れ様&2年目も頑張ってね!
今日って予定ある?
もし空いてたら、プレゼント渡したいんだけど……夕方以降とかどう?
無理ならまた後日にするから、遠慮なく言って!』
柊は一瞬息を止めた。
理央が誕生日を覚えていて、しかも「プレゼント渡したい」って言ってくれている。
胸の奥がじんわり熱くなって、すぐに返信を打ち始めた。
柊
『理央、ありがとう……めっちゃ嬉しい
今日、空いてるよ
夕方以降ならいつでも大丈夫
理央の都合に合わせるから、教えて』
他の予定なんて、最初からなかった。
あったとしても、全部キャンセルするつもりだった。
理央が会いたいと言ってくれた瞬間、他のすべてがどうでもよくなった。
理央の返信はすぐ来た。
理央
『やった! じゃあ18時くらいに駅前でどう?
プレゼント持ってくね♡
楽しみにしてて〜!』
柊はスマホを胸に当てて、深く息を吐いた。
今日が誕生日だという実感が、今になってようやく湧いてきた。
理央が、俺の誕生日を祝ってくれる。
それだけで、社会人になってからの疲れが少しだけ溶けた気がした。
18時、駅前。
理央は少し遅れてやってきた。
コートの下にニットを着て、髪を軽く巻いて、いつもより少しおしゃれ。
「柊くん、お待たせ! お誕生日おめでとう!!」
って、両手で小さな紙袋を差し出してきた。
「……ありがとう、理央」
って受け取って、袋の中を覗いた。
中には、シンプルだけど上品な革のキーケースと、小さな手書きのカード。
「柊くんへ
社会人になってからも、
いつも頑張ってる柊くんを見て、
私も頑張ろうって思えるよ。
これからも、友達でいてね。
誕生日おめでとう♡
理央」
と書いてあった。
柊の目が熱くなった。
「理央……ほんとに、ありがとう」
声が少し震えた。
「ふふ、照れちゃって〜。
開けてみて、キーケース。柊くん、鍵たくさん持ってるでしょ?これならまとめて入れられるよ」
って笑った。
「……うん。大事に使う」
って、すぐに鍵を移した。
理央のプレゼントが、柊の日常に少しだけ寄り添う。
その後、2人は近くの居酒屋へ。
「今日は私が奢る!社会人1年目の誕生日祝いだから!」
って言って、ビールと焼き鳥、ポテサラを注文した。
2人で乾杯して、仕事の話、院生生活の話、くだらない愚痴を言い合って、笑い合った。
帰り道、理央が
「柊くん、今日楽しかった?来年も祝ってあげるから、また一緒に飲もうね」
って言った。
「……うん。理央がいてくれて、ほんとに嬉しい」
って、初めて素直に言えた。
理央は
「ふふ、私もだよ。これからも、友達でいようね」
って笑った。
その「友達でいようね」が、柊の胸に甘く、でも少しだけ痛く響いた。
理央への想いは、まだ、言えない。
でも、理央が隣にいてくれるこの時間が、柊にとっての最大の幸せだった。
社会人1年目の誕生日。
理央が祝ってくれた。
それだけで柊はまた1年、頑張れそうな気がした。




