理央の誕生日
11月5日、理央の誕生日。柊は数日前からそわそわしていた。
社会人になって半年以上経つ今でも、理央に「何か贈りたい」という気持ちは変わらない。
いや、むしろ強くなっていた。
理央がいてくれるから、社会人としての孤独やプレッシャーをなんとか耐えられている。
だからこそ、誕生日くらいは、ちゃんと喜んでもらいたい。
でも、何を贈ればいいのかわからない。
海月先輩のときなら、迷わず理央に相談できた。
「女性が喜ぶプレゼントって何?」
って聞いて、
理央が辛口でアドバイスをくれた。
でも今回は、理央自身が相手だ。
相談できない。
他の誰かに聞くのも、なんだか恥ずかしい。
結局、柊は海月先輩に連絡を取った。
柊
『海月さん、久しぶりです。
急にすみません……女性が誕生日にもらって嬉しいプレゼントって、どんなのがいいと思いますか?』
海月からの返信は、すぐに来た。
海月『柊くん! 久しぶり〜♡誕生日プレゼント? 誰に?
……あ、もしかして理央!?(笑)』
柊は顔が熱くなった。
バレバレだった。
柊
『……はい。
理央、誕生日なんです。
何か喜んでくれそうなものがわからなくて……』
海月
『ふふ、柊くんらしいね♡
理央、元気でサバサバしてる子だから、
重すぎないものがいいと思うよ。
アクセサリーとかは、まだ付き合ってないならちょっと早いかも。
私なら、
「一緒に過ごす時間」+「実用的で可愛い小物」が一番嬉しいかな〜』
具体的な提案
少し良いディナー(奢る)
→ 理央、食いしん坊だから喜ぶよ!
学生時代はなかなか行けなかったお店とか、「社会人になったお祝いも兼ねて♡」って誘えば、絶対嬉しいと思う。
研究室で使える小物
→ 院生だからパソコン周りとかデスク小物が便利。
かわいいマウスパッド、リストレスト、推しキャラのマグカップとか、実用的で毎日目に入るものがいいかも。手紙かメモで「研究頑張ってね」って添えると、心に残るよ♡
柊は海月のアドバイスを参考に、
最終的に決めた。
少し良いディナー(イタリアン、予算1人1万程度)
研究室で使える小物:可愛いけど実用的なノートPCスタンド(角度調整可能、シンプルデザイン)+手書きのメモ
当日、11月5日。
仕事終わりに理央と待ち合わせて、
駅近くの少しおしゃれなイタリアンへ。
柊はスーツのまま、
理央は院生らしいカジュアルな服装。
店内は落ち着いた照明で、
窓際の席に案内された。ディナーは前菜からメインまで、
理央が
「わぁ、これ美味しそう!」
って目を輝かせて、柊の緊張を少し和らげてくれた。
デザートが出てきたタイミングで、
柊はバッグから小さな紙袋を取り出した。
「……理央、誕生日おめでとう。遅くなっちゃったけど……これ」
理央は目を丸くして、
「え!? マジで!? ありがとう!!」
って紙袋を受け取った。
その場で開けて、PCスタンドを見て
「これ、めっちゃ欲しかったやつ! 便利そう〜♡」
手書きのメモを読んで、
「……柊くん」
って、少し声を落とした。メモには、
「理央へ
いつも支えてくれてありがとう。
大学院も忙しいと思うけど、
体に気をつけて、頑張って。
これからも、友達でいてくれると嬉しいです」
と書いた。
理央は
「柊くん……ありがとう。ほんとに嬉しい」
って、目を少し潤ませた。
「私も、柊くんのこと、友達として大好きだよ。
社会人なっても会ってくれてありがとう。これからもよろしくね」
柊は
「……うん。理央も、大学院頑張って」
って、笑った。
胸が熱い。でも、「友達として」という言葉が少しだけ、胸に刺さった。
ディナーの後、2人は理央の部屋に戻って、いつものように晩酌。
理央は
「柊くんからプレゼントもらうの、初めてかも♡」
って嬉しそうにPCスタンドを机に置いて、
「これで研究捗る〜!」
と言った。
柊は理央の笑顔を見ながら、
「理央が喜んでくれるなら、それでいい」
と思った。
でも心の奥で、「友達として」という言葉が静かに疼いていた。




