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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
大学時代編

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卒業旅行

月日はあっという間に流れ、2月上旬。

卒業が確定し、卒論発表も無事に終わった。

大学生活の最後の山場を越えて、残るのは就職への準備と、「最後の思い出作り」だけ。

同期たちは卒業旅行の計画を立て始め、「沖縄行こうぜ!」「京都で食べ歩き!」と盛り上がっている。

普通なら、柊も誰かと一緒に旅行に出かけるのだろう。

でも、柊が選んだのは、バレーボールだった。

部活の練習はすでに後輩主体になっていたが、柊は毎日のように体育館に顔を出した。

「先輩、まだ来てくれるんですか?」

と後輩に驚かれるが、

「まぁ、旅行とかするよりバレーやってる方が楽しいから…」

とだけ答えて、コートに立つ。

スパイクを打ち、ブロックを跳び、汗を流す。

バレーが好きだったのは本当だ。

でも、それ以上に、卒業旅行に行ったとしても、

「海月さんと一緒に来れたら……」

「瑶季が一緒だったら……」

という妄想が頭を支配してしまうのが怖かった。


ネットでよく見る「失恋を癒す一人旅」を試してみたこともあった。

冬の温泉地へ1泊2日で行き、観光スポットを巡り、露天風呂に浸かり、地元のグルメを食べた。

でも、景色を見るたび、温泉の湯気に包まれるたび、食事の味を感じるたび、隣に瑶季の、海月先輩の幻影が浮かぶ。

「瑶季がいたら、どんな顔で笑っていたか……」

「ここ、瑶季と来たら楽しかっただろうな」

「この温泉、海月さんと入れたら……」

「この料理、海月さんとシェアしたら……」

旅のすべてが、「もしも」で上書きされてしまった。

帰りの新幹線で、柊は窓に額を押しつけて、静かに涙を流した。


結局、卒業旅行は行かなかった。

理央が理由を尋ねてきたのは、OB・OG戦が終わった後のロッカールームだった。

「柊くん、卒業旅行行かないんだって?

みんなで沖縄とか計画してるのに……どうしたの?」

柊はタオルで汗を拭きながら、包み隠さず答えた。

「……一緒に旅行に行くほど親しい相手、そんなにいないんだ。

かと言って一人旅でもしたら、瑶季や海月さんのことを探してしまう。

景色見ても、食事しても、全部『瑶季、海月さんと一緒だったら』って思っちゃって……それが怖い」

理央は少し黙ってから、

「仕方ないなぁ……じゃあ、私が一緒に行ってあげよう!」

って明るく言った。

柊は

「え……?」

と顔を上げた。理央は

「私でよければ、だけど。友達同士の卒業旅行だよ?

恋人同士みたいに見えるかもしれないけど、そんなんじゃないから安心して(笑)」

って笑った。

そして、あっという間に計画を立て始めた。


行き先は箱根。

温泉と観光と、のんびりできる場所。

宿は理央がネットで探して予約し、新幹線も一緒に取ってくれた。

旅行当日、2人は新幹線で並んで座り、車窓の景色を見ながら話した。

理央は

「柊くん、今日は他の子のこと考えないってルールね!」

って言って、お菓子を分け合ったり、一緒にゲームをしたり。


箱根に着いて、温泉街を散策し、大涌谷の黒たまごを食べ、

ロープウェイに乗って、夜は旅館の露天風呂で(男女別だけど)、のんびりした。

側から見たら、完全に恋人同士。

手をつないで歩くわけじゃないけど、理央が

「柊くん、こっちの店美味しそう!」

って腕を引っ張ったり、

「写真撮ろ!」

って肩を寄せたりする姿は、

周りから見ればカップルそのもの。

でも、柊の頭の中は、

「瑶季が一緒だったら……」

「海月さんとここに来れたら……」

という妄想でいっぱいだった。

理央もそれを察していて、

「また考えてるでしょ?」

って小声で突っ込んでくる。

柊は

「……バレてる?」

って苦笑いする。

その度に、一緒に来てくれた理央に対して罪悪感が湧いてくる。


旅行から帰ってきても、柊は卒業間際まで体育館に通い続けた。

理央は

「旅行効果あった?」

って聞いてくるけど、

柊は

「……少しは。でも、まだ……」

と正直に答える。

理央は

「焦らなくていいよ。卒業しても、私いるから」

って笑った。

卒業式の日が近づく。

柊の大学生活は、執着の4年間として、終わろうとしていた。

でも、理央という友達がいる今、

柊は少しだけ、

「これで終わりじゃない」

と思えるようになっていた。


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