表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
大学時代編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/77

二重執着

柊は、あの夜から数日間、ほとんど眠れなかった。

瑶季の唇の感触、体温、喘ぎ声——すべてが頭の中で繰り返され、

海月先輩の笑顔、腕時計の重み、シャンパンの小瓶が交互に浮かぶ。

2人への執着が、同時に胸を締めつける。

理央の言葉が、頭の中で何度も反響する。。

「瑶季さんも忘れられていなかったのかもしれない」

「上手くいくかもしれない」

「でも、ワンナイトの可能性もある」

希望とリスクが混ざった言葉が、柊の胸を揺さぶり続けた。

「もしそうなったとき、柊くんは耐えられる?」

……耐えられるはずがない。

それでも、柊は、結局、瑶季に連絡を取ってみることにした。

あの夜の瑶季の体温、「好きだったんだよ」という言葉、キスと重なり合った記憶が、毎晩のように蘇ってくる。

「もう一度、ちゃんと話したい」

「本気だったのか、確かめたい」

そんな言い訳を自分にしながら、スマホのLINEを開いた。


瑶季のトークルーム。

かつて削除したそのトークルームに過去の履歴はなく、空白の画面に、先日の着信履歴だけが残っている。

数年ぶりに開いたこの画面は、まるで空白のキャンバスのように、柊の心をざわつかせた。

震える指で、短いメッセージを打った。

『俺、まだ瑶季のこと、好きだ。また会いたい。話したい。』

送信ボタンを押した瞬間、胸が締めつけられた。

既読がつくのを待つ。

1分、5分、10分。

画面を何度も更新する。

既読は、つかない。

数日経っても、既読はつかない。

1週間経っても、既読はつかない。

2週間経っても、既読はつかない。

柊は理解してしまった。

理央の言葉の意味を。希望など、なかった。

あの夜の瑶季は、酔った勢いに流されていただけだった。

「好きだったんだよ」という言葉は、酒の勢いで出た、ただの甘い嘘。

瑶季にとって、柊はもう過去の人間でしかなかった。

数年連絡を取らなかった相手に、急に連絡してきて、一夜の過ちを犯して、それで終わり。

既読すらつけないことで、瑶季は「もう関わりたくない」と、はっきり示した。


柊は、再び瑶季を失った。

喪失感が、胸の奥にぽっかりと穴を開けた。

同時に、海月への執着が、まだ消えていない。

左手首の腕時計を見るたび、海月の笑顔が浮かぶ。

シャンパンの空瓶を見るたび、「20歳の記念に♡」という声が響く。

瑶季の体温が蘇るたび、海月のハグの温もりが重なる。

2人の記憶が、交互に柊を襲う。

二重の苦しみ。

瑶季を失った痛みと、海月を失った痛み。

どちらも、「俺のものじゃなかった」という現実が胸を抉る。


柊は、

毎日のように、練習に打ち込む。

体を限界まで動かせば、少しだけ頭の中のノイズが静まる。

でも、終わると、また2人の幻影が現れる。


理央は、そんな柊を心配そうに見守っていた。

練習後、カフェで、

「柊くん……瑶季さんに連絡したって……返事、来たの?」

柊は、ココアをかき混ぜながら、

「……いや。既読すら、つかない。理央の言った通りだった。

俺、また……同じこと繰り返した。

瑶季を失って、海月先輩にも届かなくて……

俺、2人とも、手放せないのに、どっちも、俺には届かないんだ……」

理央は、柊の手を握って、

「柊くん……今は、全部抱え込んでる状態じゃ、壊れちゃうよ。

少しずつ、手放す練習をしよう。

瑶季さんのことは、もう過去として。

海月先輩のことも、思い出として。

柊くんは、未来に進まなきゃいけないよ。

私、そばにいるから。一緒に、歩こう」

柊は、理央の手を強く握り返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ