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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
大学時代編

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交わり

「ねぇ……もっと良いことしよ…?」


柊の理性は、もう溶けかけていた。

最初の警戒心など、どこにもない。

瑶季の言葉に、言われるがまま。

「…うん」

柊は、ハンドルを握り直し、車をUターンさせた。

近くのラブホテル街へ向かう道へ、アクセルを踏み込む。

瑶季は助手席で、柊の太腿に手を置きながら、くすくすと笑っていた。

「柊くんと、こんなこと、するなんて……」

柊は、信号待ちで瑶季の横顔を見た。

酔った頰、潤んだ瞳、尖った唇。

中学の頃の無邪気な瑶季とは違う、大人の女性の色気が、柊を飲み込む。

「瑶季……俺……」

瑶季は、柊の手を自分の胸に押しつけながら、

「いいよ……柊くんなら……何してもいいよ」

車は、ラブホテルのネオン街へ滑り込んだ。

柊は、適当なホテルに車を停め、瑶季に手を引かれてエントランスへ。

自動チェックインの機械で部屋を取る。

エレベーターの中で、瑶季がまた唇を重ねてきた。

柊は、もう抵抗しなかった。


ドアが開き、部屋に入る。

照明が点くと、瑶季は柊をベッドに押し倒した。

柊は、瑶季の体を抱きしめながら、頭の片隅で思った。

(これで……また、繰り返すかもしれない……)

でも、今は、そんな考えすら溶けてしまう。

瑶季の唇、肌、息——すべてが、柊を飲み込んでいく。


瑶季の唇が柊の首筋を滑り、息が熱く絡みつく。

ベッドのシーツがくしゃくしゃになり、部屋の照明が薄暗く2人の影を長く伸ばしていた。

瑶季は柊の上に跨がり、髪を耳にかける仕草で一瞬だけ顔を上げた。

その瞳は酔いと熱で潤んでいて、

中学の頃の無邪気な光とは違う、大人の色気を帯びていた。

「柊くん……」

瑶季が囁く。

唇がまた重なり、舌が深く絡む。

柊の両手は瑶季の腰を強く掴み、引き寄せる。

瑶季の体が震えて、吐息が漏れる。

最中、瑶季が突然動きを止めた。

柊の胸に額を押しつけて、息を荒げながら、ぽつりと呟いた。

「あの時、私……好きだったんだよ」

その言葉が、柊の頭の中に雷のように落ちた。

好きだった。

あの時、瑶季も俺を好きだった。

中学3年の冬、傷を見られて泣いて怒ってくれたあの瞬間。

体育祭のセンター写真、深夜の通話、初詣の手繋ぎ、夏祭りの浴衣——

すべてが、ただの片思いじゃなかったのかもしれない。

瑶季も、同じように俺を想っていた。

次の瞬間。

瑶季がまた唇を重ねてきて、

「今だけは……あの頃に戻ろう?」

と囁いた。

その一言で、柊の心にあった海月先輩への執着が、ぱちんと音を立てて蓋をされた。

海月先輩の笑顔、腕時計の感触、シャンパンの小瓶——すべてが、一瞬で遠ざかる。


今、この瞬間だけは、柊の頭の中は瑶季一色に戻った。

中学の頃のように、瑶季だけが世界の中心になった。

中学の頃と同じように、瑶季しか見えない。

瑶季しか欲しくない。

瑶季しかいらない。

柊は、瑶季の腰を抱き寄せ、今度は自分から強く唇を重ねた。

瑶季の舌を迎え入れ、絡め合い、互いの息が混じり合う。

瑶季は柊のシャツのボタンを外し始め、柊も瑶季の服を脱がせていく。


柊は瑶季を抱き寄せ、強く、激しく、体を重ねた。

瑶季も同じだった。互いの体を求め、息を奪い合い、名前を呼び合い、何度も何度も、「あの頃」を取り戻すように。

汗と吐息と、肌がぶつかる音だけが部屋に満ちて、2人は激しく求め合った。

瑶季の爪が柊の背中に食い込み、柊の指が瑶季の腰を強く掴む。

肌と肌が触れ合うたび、3年半の空白が、一気に埋められるような錯覚に陥る。

「柊くん……」

「瑶季……」

名前を呼び合う声が重なり合う。

2人は、深夜のラブホテルの部屋で、互いの体を貪るように求め合った。

柊の頭の中は、瑶季だけでいっぱいだった。

海月先輩の記憶は、どこか遠くに押しやられ、今、この瞬間だけは、瑶季だけがすべてだった。


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