卒部式
海月先輩の大学卒業式とバレー部の卒部式の日。
3月25日、桜の蕾がようやく色づき始めた頃。
大学の卒業式は午前中、バレー部の卒部式はその日の午後。
卒部式は毎年男女合同で、体育館のコートに全員が集まり、4年生が一人ずつ名前を呼ばれて前に出て。後輩たちから花束や寄せ書きを渡される。
最後に全員で円陣を組んで、
「これからもバレー続けよう!」
「卒業してもたまに顔出してね!」
という声が飛び交う。
海月先輩は、女子部の代表として前に立った。
「みんな、ありがとう!この部活で出会えて、本当に楽しかった♡
院でも、たまに遊びに来るから待っててね〜!」
って、いつもの明るい声で言って、みんなに手を振った。
柊は後輩の列の前の方にいて、海月先輩の笑顔を胸が痛くなるほど見つめていた。
先輩が後輩たちにハグされて、頭を撫でられて、笑っている姿が、柊の心を抉る。
「俺も……」
って思うけど、動けない。
卒部式が終わって、みんなで写真を撮り終わった後。
柊は勇気を振り絞って、海月先輩に近づいた。
「…先輩」
海月先輩が振り返って、
「柊くん! どうしたの〜?」
って笑顔で言った。
柊はスマホを握りしめて、「写真、撮ってもらえませんか?」って言った。
声が震えてる。
海月先輩は
「もちろん! 撮ろ撮ろ〜♡」
ってすぐに隣に立って、
自分のスマホを取り出した。
2人で並んで、海月先輩が自撮り棒を伸ばして、
「はい、チーズ〜!」って撮った。
何枚か撮って、海月先輩が
「これ、めっちゃいい感じ! 送るね♡」
ってLINEで即送ってくれた。
写真の中の柊は、
緊張で顔が強張ってるけど、
海月先輩は満面の笑み。
肩が少し触れ合ってる。
柊は
「…ありがとうございます、先輩」
って小さく言った。
海月先輩は
「ふふ、照れてる? 可愛いな〜」
って頭を撫でて、
「これからも、たまに会おうね!」
って言ってくれた。
柊は
「…はい」
って頷くのが精一杯だった。
夜は、近くの居酒屋を貸し切っての追いコン。
男女合同で、毎年恒例の盛大な宴会。
テーブルは長机がいくつも並んで、焼き鳥、唐揚げ、ポテト、ドリンクバーが並ぶ。
BGMは部活の思い出ソングが流れ、みんなが大声で笑い合ってる。
柊は、海月先輩の隣の席を狙った。
理央が
「柊くん、隣取りたいなら今だよ!」
って小声で耳打ちしてくれて、柊は素早く移動して座った。
海月先輩は
「柊くん、隣いいの? 」
って笑ってくれた。
柊の心臓は、もう限界だった。
理央は斜め向かいの席から、柊を見てニヤニヤしてる。
宴会の中盤、理央が柊の隣に来て、小声で
「柊くん、今日のツーショット見た?海月先輩、めっちゃ嬉しそうだったよ」
って言う。
柊は
「……うん」
って頷く。
理央は
「でもさ、柊くん顔赤すぎ(笑)先輩の隣でずっと固まってたじゃん。バレバレだよ〜」
ってからかう。
柊は
「…うるさい」
って返すけど、顔が熱い。
宴会の終盤、みんなが少し酔ってきて、柊は海月先輩に
「…先輩、今日は本当にありがとうございました」
って言った。
海月先輩は
「柊くんこそ、いつもありがとうね♡」
って笑ってくれた。
その笑顔が、胸に深く刻まれる。
追いコンが終わって、みんなで駅に向かう道すがら、理央が柊の横に並んで、
「今日、柊くん頑張ったね。海月先輩の隣、キープできたじゃん」
って言った。
柊は
「……うん」
って頷く。
理央は
「でもさ……気持ち、伝えるなら今のうちかもね」
って、真剣な顔で言った。
柊は黙って歩いた。
海月先輩の笑顔が、頭から離れない。
大学院に行っても、まだ繋がっていられる。
でも、
「たまに」
という言葉が、
胸を刺す。




