プレゼント選び
海月先輩の誕生日(3月3日)が近づいたある夕方、練習後のファミレスで柊は理央に相談を持ちかけた。いつものように2人で向かい合って座り、柊はコーヒーをかき混ぜながら、
「……理央、海月先輩に誕生日プレゼント贈りたいんだけど……何が良いかな」
って切り出した。
理央はストローでミルクティーを飲む手を止めて、
「え、ついにプレゼント出すんだ? やるじゃん柊くん」
ってニヤッと笑ったあと、すぐに真顔になって
「で、どんなの考えてんの? 候補教えて」
って聞いてきた。
柊はスマホのメモを開いて、考えていた候補を読み上げた。
「①自分の好きなもの、よく使うもの……俺が好きなものなら、他の人も喜ぶかなって思って」
「……それ、完全に自己満コースじゃん(笑)自分の好きなもの押し付け感が強すぎる。
先輩の好み知らないのに『俺が好きだから』って渡されたら、困るよ?」
柊は少し凹んで、次に進む。
「②少しお高めのお酒……海月先輩、お酒好きだろ?
ビールはあんまりだけど、日本酒とかカクテルとか、
飲み会で優雅に飲んでるから……」
「うーん、悪くないけど、付き合ってもないのに『お酒』はちょっと攻めすぎかも……
あと、飲めない日もあるしね。
先輩がお酒好きって知ってるのはいいけど、下手したら『え、飲む前提?』って引かれるリスクあるよ」柊はさらにメモをスクロール。
「③アクセサリー……誕生石のネックレスとか、ちょっと予算張るけど……」
理央は即座にストローを置いて、
「却下! 即却下!!」
って両手でバッテンを作った。
「柊くん、ちょっと待って。付き合ってもないのに、いやたとえ付き合ってたとしても、
大学生がネックレスとか数万のアクセサリーなんて重すぎ!!
誕生石とかって、もう完全に『好きです』アピールじゃん。
海月先輩、優しいから受け取ってくれるかもしれないけど、内心『え……これどうしよう』って困る可能性大だよ。重いプレゼントは、相手にプレッシャーかけるだけだから、今は絶対やめときな」
柊は少しショックを受けつつ、最後の候補を出す。
「④高価な物とかカタログギフト……バイト代貯めてるから、10万くらいなら出せるし……」
理央はもう呆れた顔で、「柊くん……マジで?」ってため息をついた。
「金額=気持ちの大きさじゃないよ。むしろ高すぎるプレゼントは、
『これだけ金かけたんだから、俺のこと好きになってくれ』って無言の圧力になるんだよ。
海月先輩、優しいから受け取っちゃうかもしれないけど、
それで関係がギクシャクする未来しか見えない。10万とか、付き合ってない相手に渡す額じゃないって」
理央は少し考えて、
「私が思うベストなプレゼント、提案していい?」
って言った。
柊は「…お願いします」って俯いた。
「まず、予算は3000円〜5000円くらいに抑えよう。それ以上出すと、絶対重くなる。
おすすめは、
・カフェのギフトカード(スタバとかタリーズの2000円分)
→ 『忙しいときに使ってください』って感じで、気軽に受け取れる
・おしゃれなハンカチや手ぬぐい(誕生石カラーのものとか)
→ 実用的で、毎日使ってもらえる
・手作りじゃないけど、手書きメッセージカード付きの小さな焼き菓子セット(クッキーとかマカロン)
→ 『いつもありがとうございます』ってカード添えれば、気持ち伝わる
理央は最後に、優しく言った。
「柊くん、海月先輩のこと好きだよね。
海月先輩のこと好きすぎて、『これくらいしなきゃ』ってエスカレートしがちだけど、今は『重くならない』が一番大事。『先輩に感謝してる後輩』として贈るのが一番だよ。
重くならないように、でも気持ちはちゃんと伝わるように。
それで、先輩が喜んでくれたら……少しずつ、距離縮まるかもよ?」柊は頷いた。
「……ありがとう、理央。参考にする」
理央はニコッと笑って、
「がんばってね。海月先輩、優しいから、きっと喜んでくれるよ。でも、ほどほどにね?焦らず、少しずつ距離縮めていこうよ」
って優しく締めた。




