表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
大学時代編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/77

暴走

柊の海月への恋心は、止まらない。

むしろ、日を追うごとに深く、熱く、息苦しくなる。

海月先輩は4年生。

あと1年で卒業する。

頭では分かっている。

このまま想い続けていても、俺が幸せになれる確率は低い。

卒業したら、部活で会う機会はなくなる。

就活、卒論、就職先での新しい生活——

海月先輩の日常から、俺はどんどん排除されていく。

それでも、気持ちは止められない。

海月先輩の笑顔を見るだけで胸が熱くなり、海月先輩の声が聞こえるだけで息が楽になる。

海月先輩が他の誰かと話しているのを見ると、胸の奥が締め付けられて、吐き気がする。

(俺だけを見てほしい……俺だけと話してほしい……)

練習日によって、俺の調子は極端に変わった。

海月先輩が卒論や就活で部活に来ていない日は、動きが鈍くなる。

トスが上がっても、跳ぶ力が湧かない。スパイクはネットに引っかかり、レシーブは後ろに逸れる。

「柊、今日なんかダメだな」って言われても、

「すみません……」としか返せない。

心がどこか別の場所に飛んでいて、コートに立てていない。

海月先輩がいない体育館は、ただの広い空洞にしか見えない。


逆に、海月先輩が来ている日は違う。

海月先輩の姿が見えた瞬間、俺の体は勝手に動く。

助走が長くなり、跳躍が高くなる。

スパイクはいつもより鋭く、コートに突き刺さる。

レシーブはスパイクを狙って、必死に体を投げ出す。

「今日の柊、ヤバいな」「海月先輩いるだけで別人じゃん」と笑われる。

俺はただ、「海月先輩に見ててほしい」という一心で跳んでいるだけだ。

そんな様子は、周りにはバレバレだった。

男子部の同期が、練習後に俺を肘で突いてくる。

「柊、お前完全に海月先輩に落ちてるだろ。先輩いない日はゾンビみたいだし、いる日は神がかってる」

女子部の1年生が、ニヤニヤしながら

「柊くん、海月先輩見るとき目がキラキラしてるよ〜。もう完全にバレてるから」

俺は「そんなんじゃないです」と否定するけど、誰も信じていない。

海月先輩だけが、知らない。

海月先輩はいつも通り、

「柊くん、今日もすごかったよ〜! 私も負けないように頑張らなきゃ♡」

と笑顔で声をかけてくれる。

俺は「ありがとうございます」と返すだけで、視線を逸らして、心臓の音を隠す。


俺の想いは、どんどん膨らむ。

恋心、嫉妬、独占欲——

すべてが、海月先輩に向かって、暴走し続ける。


会う機会は部活以外でも増え始めた。

同じ学部学科という共通点が、予想以上に絡み合ってくる。

講義の空きコマで図書館の自習スペースに座っていると、向かいの席に海月先輩が座る。

「柊くん、ここ空いてたんだ〜。私もちょっと卒論の資料探しててさ」

柔らかい笑顔でそう言われて、俺は一瞬息を止める。

心臓が、耳元で爆発しそうに鳴る。

「…はい、座ってください」

なんとか平静を装って返すけど、声が少し上ずっているのが自分でもわかる。

海月先輩はスマホを置いて、

「私、卒論テーマ決めるの遅れちゃってて…柊くん、学科の先輩に聞いたらおすすめの先生いた?」

と普通に話しかけてくる。

俺は必死に頭を働かせて答える。

「…あの、〇〇先生が詳しいって聞いたことあります」

海月先輩は目を輝かせて、

「えー! ありがとう! 私、明日相談しに行ってみよっかな♡」

その「♡」の響きだけで、俺の1日が決まる。

部活以外でたまたま会っただけなのに、

一言、二言、普通の会話をしただけで、胸が熱くなって、

帰りの電車の中でもずっと海月先輩の笑顔が頭から離れない。

LINEも、少しずつ増え始めた。最初は部活の連絡だけだった。

「明日の練習、合同でやるよ〜! 楽しみにしててね♡」

俺は「了解です」と返すだけ。


俺はわかっている。

海月先輩は、俺を「可愛い後輩」としてしか見ていない。

新歓のハグは、酔った勢い。

今も、ただの「同じ高校の後輩」として、気軽に接してくれているだけ。

異性として見られていないこと、はっきりわかっている。

でも、気持ちは止められない。

海月先輩と話すだけで、心臓が爆発しそうに高鳴る。

一言交わしただけで、1日幸せになる。

海月先輩が他の男子部員と笑っているのを見ると、胸がえぐられる。

海月先輩が女子部の後輩と楽しそうにしているのを見ると、

(俺だけを見てほしい……俺だけと話してほしい……)

という独占欲が、抑えきれなくなる。

少しずつ、アプローチを試みた。

練習後にご飯、遊びに行ったり、色々誘ってみた。

でも、卒論や就活を理由に優しく、でも上手く躱されるばかり。

アプローチが上手くいかないたび、

嫉妬と独占欲が膨らむ。


恋心、嫉妬、独占欲——

すべてが、海月先輩に向かって、暴走し続ける。

あと1年で海月先輩は卒業する。

それまで、この想いはどうなるのか。

届くのか。壊れるのか。

柊は、まだわからないまま、毎日のように海月先輩を探してしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ