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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
大学時代編

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39/77

再現

新歓コンパの翌日から、柊の頭の中は完全に海月先輩で埋め尽くされた。

朝起きて最初に思い浮かぶのは、昨夜のハグの感触。

練習に行く途中の電車の中で、彼女のシャンプーの匂いを思い出して胸が熱くなる。

授業中、教授の声が遠く聞こえる間に、

「海月先輩、今何してるかな……」

とぼんやり考えてしまう。

部活の練習が始まると、コートで彼女の姿を探してしまう。

女子部は男子部と隣で練習している。

海月先輩がスパイクを打つ姿を見ると、心臓がドクドク鳴って、自分のスパイクが決まっても、「見ててくれたかな」ってそればかり考えてしまう。


3年半も瑶季に囚われていたのが、嘘みたいだった。

瑶季の写真は消した。

トーク履歴も消した。

定期演奏会の記憶も、

夏祭りの手繋ぎも、

自傷がバレた日の涙も、

全部が急に遠く感じる。

それどころか、もはや全く思い出さなくなった。

今、頭の中を占めているのは海月先輩だけ。

彼女の笑い声、

少し低めのハスキーな声、酔ったときの甘えた口調、

「柊くん〜可愛いじゃん!」って言って抱きついてきた感触。

全部が、瑶季の記憶を塗り替えてしまった。


でも、それは「恋心が移った」という綺麗な話じゃなかった。

柊の根本は何も変わっていなかった。

ただ、執着の矛先が瑶季から海月先輩に移っただけ。

嫉妬心、独占欲、依存——

全部がそのまま、海月先輩に向かっている。

練習後、海月先輩が他の男子部員と笑いながら話しているのを見ると、胸がざわつく。

「なんであいつとそんなに楽しそうなんだ」

「俺よりあいつの方が面白いのか」

「触らないでほしい」

そんな黒い声が頭の中でループする。

海月先輩が他の後輩に「可愛い〜!」って絡んでいるのを見ると、吐き気がする。

想像が暴走する。

海月先輩が誰かと付き合って、

「おはよう」ってLINEを送って、デートして、俺じゃない誰かの隣で笑っている。

考えただけで、胃が捩れる。

「海月先輩を俺のものにしたい」

そんな言葉が、無意識に頭をよぎる。

瑶季のときと同じように、「他の誰かに取られたくない」という恐怖が、

今度は海月先輩に向かっている。

練習中、海月先輩が

「柊くん、今日のスパイクえぐかったね〜! かっこよかった♡」

って笑顔で言ってくれると、一瞬で世界が輝く。

でも、その笑顔が他の誰かに向いた瞬間、また暗闇が戻ってくる。


柊は気づいていた。

これは恋じゃない。

少なくとも、健全な恋じゃない。

ただ、虚無の穴を埋めるための、新しい「依存先」を見つけただけ。

瑶季のときと同じように、海月先輩を「俺の救い」にしてしまっている。

彼女がいれば大丈夫。

彼女がいなくなったら、また壊れる。

そんな危ういバランスの上に、柊の心は立っている。


ある日の練習後、

海月先輩が柊に近づいてきて、

「ねえ柊くん、今度みんなで飲み行かない?

私、柊くんともっと話したいな〜♡」

って甘えた声で言ってきた。

柊は、

「…行きたいです」

と即答した。

心臓が爆発しそうなくらい鳴っている。

でも、同時に思う。

俺はまた、誰かを「必要」としてしまっている。

寝ても覚めても海月先輩の声が脳内で反響し続ける。

何をしていても海月先輩のことが頭から離れない。


この新しい依存は、柊を救うのか。

それとも、また同じ地獄を繰り返すのか。

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