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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
高校時代編

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31/77

深化

柊は、毎晩のようにスマホのアルバムを開いていた。

卒業式のツーショット。

瑶季の笑顔が、自分と並んでいる。

春休みの遊園地で撮った、観覧車の中の自撮り。

公園でバレーをした後の、汗だくで笑い合う2人。

ファミレスのテーブルで、ノートを広げて勉強している横顔の写真。

すべてが、色鮮やかで、温かくて、遠い。


スクロールする指が止まると、次はトーク履歴。

中学3年の頃の、深夜まで続いた無数のメッセージ。

「今日もお疲れ!」「数学のここ、わかった?」「寝落ちしちゃった、ごめん!」

インフルエンザのときの「お大事に♡」のスタンプ。

夏祭りの前日の「楽しみ〜♡」

すべてが、過去のもの。

柊は、画面をタップして拡大する。

瑶季のアイコン。

最後のメッセージは、3月6日。瑶季の誕生日。

柊は重くならないように、長くなりすぎないように考えたメッセージを昨年同様の午前3時6分に送信した。

だが、柊が送ったお祝いメッセージに既読がついたのは1週間後で、返事はなかった。

柊の誕生日に、通知は1件も来なかった。


柊は、ベッドに仰向けになって、天井を見つめた。

胸の奥で、何かが静かに崩れていく音がする。

(もう、俺のことなんて忘れてるんだろうな)

瑶季の日常は、もう柊抜きで完結している。

吹奏楽部のコンクールで金賞を取ったニュースを、共通の友達のSNSで見た。

瑶季の笑顔が、たくさんの友達に囲まれて輝いている。

男友達も、女友達も、みんなで旅行に行った写真もあった。

瑶季は、幸せそうだった。

柊は、スマホを胸に押しつけて、目を閉じた。

(あの時……)

中学3年の冬、教室で傷を見られて瑶季が泣いた日。

本気で怒って、涙を流して、「一人で抱え込まないで」と言ってくれた。

あの瞬間、瑶季も俺のことを好きだったのかもしれない。

友達以上の何かを感じてくれていたのかもしれない。

元彼からの復縁メッセージのスクショを送ってきたとき。

「あの時、俺が『俺と付き合え』って言えてたら……」

夏祭りの夜、手を繋いだとき、「好きだ」って言えてたら。

卒業式の後、春休みの最後の日。

「高校違っても、ずっと一緒にいよう」って、もっと強く言えてたら。

「たられば」が、頭の中で無限にループする。

後悔が、嫉妬と独占欲を燃料に、どんどん膨らむ。

(瑶季は俺のものだったはずだ。俺の側にいてくれるはずだった。他の誰かと笑ってる瑶季なんて、見たくない。俺だけを見てくれればよかったのに……)


柊は、スマホの画面をもう一度開く。

過去の通話履歴。

深夜2時まで続いた、ただ呼吸音だけが聞こえる時間。

あの頃は、瑶季の存在が、自分の心の支えだった。

今は、その記憶だけが支えだ。美化された過去に縋る。

現実の瑶季は、もう遠い。

連絡は来ない。

既読すら、遅い。

柊は、毎晩のように同じ写真を眺め、同じ記憶を反芻し、胸の痛みを噛み締めて眠りにつく。

(瑶季……俺は、まだ好きだよ。今でも、ずっと……)

でも、その言葉は、もう瑶季に届かない。

柊の心の中でだけ、永遠に響き続ける。



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