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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
中学時代編

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22/77

春休み

春休みは、予想以上に2人の時間を埋め尽くした。

公立高校の合格発表から数日後、柊は新しい制服の採寸に行き、瑶季は第二志望の高校の入学説明会に参加した。

それでも、毎日のようにLINEが続き、通話が続き、会う約束が次々と入った。

「高校が別々になったから、春休みはたくさん遊ぼう」——そんな自然な流れで、2人は毎日を共有していった。

SVリーグのシーズンがちょうど佳境を迎えていたこの時期、2人は地元のチームのホームゲームに何度か足を運んだ。アリーナの観客席で隣同士に座り、

「今のスパイク、跳び方めっちゃ参考になるよね」

「ブロックの絞り方が良いよね」

と、試合の実況みたいに囁き合う。

試合後、帰り道にコンビニで買ったホットコーヒーを飲みながら、

「次はアウェイも行ってみようか」

そんな他愛もない話で、夜の街を歩く。


公園で軽くバレーをする日もあった。

柊がネットを張り、瑶季が「私、サーブ下手だから優しくね!」と笑いながらトスを上げる。

柊のスパイクは、昔のエースの面影を残しながらも、瑶季の前では控えめになる。

「瑶季、トス上手くなったじゃん」

「柊くんが教えてくれたからだよ」

汗を拭きながらベンチに座って、スポーツドリンクを分け合う。

側から見たら、完全にカップル。

でも、2人は「友達」として、その境界を越えていない。

遊園地に行った日もあった。

ジェットコースターで瑶季が「怖い怖い!」と柊の袖を掴み、観覧車で頂上に来たときに、

「高校違っても、こんな風に遊べるよね?」

「うん。絶対」

と、約束のような言葉を交わした。


科学館では、プラネタリウムで隣同士に座り、星空の下で

「宇宙って広すぎて怖いよね」

「でも、瑶季と一緒なら、なんか安心する」

と、柊が珍しく本音を漏らした。

瑶季は少し照れて、

「私も…柊くんと一緒なら、どこでも行ける気がする」

と返した。


そんな春休みの日々が、2人にとってかけがえのない時間だった。


クラス最後の打ち上げ。

クラスのメンバーだけで集まり、比較的安価な焼肉食べ放題の店。

長テーブルにずらりと並んだクラスメイトたち。

柊と瑶季は、当然のように隣同士の席に座った。

「またこの2人隣かよ〜」

「もう完全にカップルじゃん」

「本当に付き合ってないの? 嘘だろ?」

冷やかしが飛ぶたび、2人は笑って受け流す。

「だから、友達だって!」

瑶季がフォークを振りながら言うと、

「友達でそんなにベタベタすんなよ〜」

とさらにツッコミが入る。

隣で瑶季が「もう、みんなうるさい!」と笑って返す。

柊は黙ってカルビを焼いて、瑶季の皿に置いてやる。

瑶季が「ありがとう♡」って小声で言って、

柊は「…別に」って返す。

周りは「ほらほら、またやってる!」って大爆笑。


焼き肉の煙が立ち上る中、みんなが「高校がんばろうぜ!」と乾杯する。

柊はグラスを掲げながら、隣の瑶季をチラッと見た。

瑶季も、同じタイミングで視線を返してきた。

言葉はないけど、目が合った瞬間、2人とも小さく笑った。

「高校違っても、毎日連絡取ろうね」

「うん。絶対」

そんな約束が、煙のように漂う店内に溶けていった。

2人は付き合っていない。

でも、側から見たら完全に恋人同士。

柊の心の中では、瑶季への想いが「友達以上」の領域に深く入り込んでいる。


この春休みは、2人にとって「最後の自由時間」だった。

高校が始まれば、環境が変わり、距離が変わり、少しずつ、何かが変わっていくかもしれない。

でも、今はこの瞬間だけが、2人のすべてだった。

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