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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
中学時代編

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合格発表

公立高校合格発表の日。

空は曇り空で、春の気配はまだ薄く、風が冷たい。

2人は前日の夜、LINEで「一緒に発表見に行くのはやめよう」って決めた。

理由はシンプルで残酷だった。

「2人とも合格なら最高。2人とも不合格なら、まだマシ。でも、片方だけ合格だったら…気まずすぎる」

だから、それぞれ一人で行く。結果が分かってから、連絡しよう。

それでいいって、互いに言い聞かせた。

柊は一人で電車に揺られ、第一志望の高校に着いた。

校門前はすでにで混み合っていて、掲示板の前に人だかりができている。

柊は、群れに紛れてゆっくり近づいた。

心臓がうるさい。喉が渇く。手が冷たい。

まずは自分の受験番号を探す。

掲示板の上から下へ、目を細めて追う。

…あった。自分の番号。

合格の欄に、黒く太く印刷されている。一瞬、息が止まった。

次に、胸の奥から熱いものが込み上げてきて、

「…やった」

声が漏れた。

周りの視線なんか気にならない。

思わず拳を握って、小さくガッツポーズ。

達成感と嬉しさが、波のように体を駆け巡る。

「俺、合格した…第一志望に」

涙が出そうになるのを堪えて、深呼吸。


でも、すぐに次のことが頭をよぎった。

瑶季の番号。柊は密かに、瑶季の受験番号を覚えていた。

受験当日の瑶季の席と自分の席、その位置関係と自分の受験番号を元に、瑶季の受験番号を割り出した。

その番号を掲示板の中からもう一度、急いで探す。

瑶季の番号…

無い。

合格欄に無い。代わりに「相手校に合格」の欄に、瑶季の番号が載っていた。

つまり、第1志望は不合格。第2志望の別高校に合格。

柊の体から、力が抜けた。

自分が合格した喜びが、一瞬で灰色に変わる。

胸が締めつけられるような痛み。

瑶季の笑顔が浮かんで、

「瑶季は…不合格…?」

頭が真っ白になる。合格した自分が、急に申し訳なくなった。

瑶季はきっと、違う掲示板の前で、自分の番号を探して…そして、見つからなくて、肩を落としてるかもしれない。

どんな顔で連絡しよう。「おめでとう」って言えない。「残念だったね」って言うのも、残酷すぎる。「俺は合格したよ」なんて、絶対に言えない。

悩んで、スマホを握りしめたまま立ち尽くしていると、

通知音が鳴った。瑶季からだった。

瑶季

『柊くん…結果見た?』

柊の指が震えて、返信を打てない。でも、瑶季は待ってくれている。意を決して、打った。

『…見た』

瑶季

『私、第1志望落ちた。けど、第2志望の方は合格できたよ』

短いメッセージ。でも、瑶季らしい明るさを無理に保とうとしてるのが、文字から伝わってくる。

柊は喉が詰まって、どう返せばいいかわからない。でも、黙ってるわけにはいかない。

『…俺、第1志望合格した』

送信した瞬間、後悔した。でも、もう遅い。瑶季からの返信は、少し遅れてきた。

瑶季

『 柊くん、おめでとう!!!ほんとにすごいよ!! やったね!!!』

絵文字がいっぱい。でも、柊にはわかる。瑶季は今、笑顔を作ってる。

瑶季

『私の方は残念だったけど…柊くんが合格して、ほんとに嬉しい。

これからも、毎日話そうね?高校別々でも、友達だよ』

柊の目から、涙がぽろりと落ちた。スマホの画面がぼやける。

『…ありがとう。瑶季も、おめでとう』

『ごめん。俺、瑶季と一緒に高校行きたかった』

瑶季

『私もだよ。でも、仕方ないよね。

これからも、毎日LINEしようよ。通話もしてくれる?』

柊は頷くように、スマホを握りしめた。涙を拭って、返信した。

『…うん。絶対』

掲示板の前で、柊は一人で立っていた。


合格した喜びと、瑶季の不合格の痛みが、同時に胸を埋め尽くす。

でも、瑶季の「毎日話そうね」という言葉が、唯一の光のように感じた。

高校は別々になる。でも、繋がりは切れない。

それが、今の2人にできる最大の約束だった。

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