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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
中学時代編

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14/77

加速

柊はベッドに横たわったまま、スマホを胸の上に置いていた。

熱はまだ38度前後をうろつき、頭がぼんやりする。

枕元に積んだ参考書には手を伸ばす気力すら起きないが、インフルエンザという免罪符が罪悪感を薄めてくれる。

でも、別の感情がどんどん膨らんでいく。

……寂しい、瑶季の声が聞きたい。

今日の学校で何があったのか、瑶季の声で聞きたい。

瑶季を求める渇望が、瑶季に会えない孤独感が柊の胸を強く締め付ける。


昼頃は無理矢理眠りについて何とか凌いだ。

しかし夕方頃、瑶季が家に帰ってきたであろうタイミングで、指が自然にLINEを開く。

『今、話しても大丈夫?』

瑶季はいつものようにすぐに反応してくれるが、既読がつくのがいつもより長く感じた。

瑶季

『私は全然いいし何なら私も話したいけど…柊くん、まだ寝てた方がいいんじゃないの?』

『眠れないんだ……

なんか、寂しくて……押し潰されそう』

瑶季

『そっか…寂しいって、熱のせい? それとも他に何かあった?』

『熱もあるけど…それだけじゃないかも。学校行けなくて、瑶季の声聞けないのが辛い。

今日、学校どうだった?普通の話でいいから、聞かせてほしい』

既読はすぐに着いたが、返事が返ってくることは無かった。


その代わり、すぐに通話の着信が鳴った。

「もしもし…柊くん?」

声が聞こえた瞬間、柊の目頭が熱くなった。

「…うん。声、聞けて嬉しい」

瑶季は少し慌てたように笑う。

「ごめんね、急に通話しちゃって。でも、文字だけじゃ伝わりにくいかなって思って…

今日の学校、普通だよ。数学の小テスト返ってきたんだけど、私85点だった! 柊くんが教えてくれた増減表のやつ、めっちゃ出たんだよ〜」

「…85点。すごいじゃん。おめでとう」

「ありがとう!。でも、柊くんがいないと教室なんか寂しいよ。

みんな『柊、インフルだって』って心配してた。

級長のあいつが『柊抜きじゃクラス弱いな〜』って冗談言ってたけど、なんか本気っぽかったよ」

柊は小さく笑った。

でも、喉の奥が詰まる。

「俺も、瑶季の声聞けてよかった。なんか、今日一日ずっと瑶季のことばっかり考えてた気がする。

学校の話とか、くだらないことでもいいから、もっと聞きたい」

瑶季の息が、少し止まった気がした。

それから、優しい声で。

「うん。じゃあ、もっと話そう。私も柊くんの声聞けて、思ったより元気そうで安心したよ。

熱、下がるまで毎日話そう?勉強の話じゃなくてもいいから。寂しいときは、すぐ言ってね」

柊は頷くように、スマホを耳に押しつけた。

「…ありがとう。瑶季がいると、なんだか安心する」

通話は、1時間近く続いた。

瑶季が先生の変な癖を真似したり、

吹奏楽部の後輩がフルートを吹きすぎて唇腫らした話とか、

本当にくだらない日常を、ゆっくり話してくれた。

柊はただ、聞き役に徹した。

瑶季の声が、熱で火照った体を優しく冷ましてくれるみたいだった。


切る前、瑶季がぽつりと言った。

「柊くん、早く良くなってね。私、柊くんがいない学校、なんか味気ないよ」

柊は、声に出さずに呟いた。

「俺も…瑶季がいないと、全部味気ない」

通話が終わって、スマホを胸に当てたまま、柊は目を閉じた。


熱っぽい体が、ようやく少し落ち着く。

でも、心の中では、瑶季への想いがどんどん熱くなり膨らんでいく。

数日瑶季の声が聞こえないだけで、会えないだけで息が苦しくなる。

瑶季の日常を、全部知りたくなる。

瑶季がいない未来なんて、想像したくない。

柊の心は、瑶季でいっぱいになっていた。

インフルエンザの熱は、数日で下がり始める。

でも、この想いの熱は、ますます高くなっていく。

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