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好きになりすぎるのは、悪いことですか  作者: ネロ
中学時代編

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大晦日と初詣

大晦日の夜、柊の部屋は静かだった。

リビングで年越しそばを食べ、テレビで紅白を見ながら笑い声を上げている。

柊はリビングにいながらも、スマホを手放さず瑶季とのメッセージを続けていた。


瑶季

『柊くん、年越しそば食べた?

うちは今食べ終わったとこ〜! お母さんが毎年作ってくれるやつ、めっちゃおいしいんだよね』

『食べた。うちも家族で。

なんか、今年はいつもより味が染みた気がする』

瑶季

『わかる〜! 今年は受験あったし、なんか特別だよね…

柊くん、カウントダウンどうする? 通話は…家族いるから無理かな?』

『うちも家族いるけど…やっぱり自分の部屋行こうかな。

通話して一緒にカウントダウンしよう』

瑶季

『いいの?やった! じゃあ23:50くらいから通話しよ!』

それから時間になるまでは、2人で途切れなくメッセージを続けた。

テレビをBGMに、

「あと何分?」

「あと30分!」

「あと15分! 緊張してきた〜」

「俺も。なんかドキドキする」


23:50

2人は家族の集まりを抜け出してそれぞれ自室に籠り、通話を繋いだ。

柊が発信ボタンを押すと、一呼吸の間にも満たないほどすぐに繋がった。

瑶季

「やっほー柊くん!大晦日も声聞けて嬉しい!」

「けど…いいの?せっかく家族でいる時間なのに…」

「うん…親はテレビに夢中だし、お酒も飲んでるから気づかないよ…」

「それに、俺は瑶季と話してるのが一番楽しいから」

「瑶季こそ、せっかくの家族の時間なのに、俺と通話なんかしてていいの?」

瑶季

「もう、また俺なんかって言ってる!私も柊くんと話してる方が楽しいからいいの!」

「そっか…ありがとう…」

瑶季の言葉が、柊の不安を解かすように温かく染み入る。瑶季の声が、言葉が、柊の孤独感を消し去り、代わりに安心感を与えていく。

瑶季

「…ねぇ柊くん、まだ話し始めてから3カ月くらいしか経ってないなんて嘘みたいだね。体育祭のときに初めて話して、勉強たくさん教えてもらって、一緒に勉強もして、柊くんの腕の傷を見て……すごい濃い時間を過ごした気がする……」

「そうだね…俺も、瑶季と話し始めてから、日々が楽しくなった気がする。本当に…ありがとう」

2人はしばらく、これまでのことを振り返っていた。


年が変わるまであと1分を切った頃に瑶季が

「やばい、あともう1分だよ!残り10秒になったら一緒にカウントダウンするよ!」と興奮気味に言ってくる。そして、その時はあっという間に訪れた。

「「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1!」」

日付が変わって年が明けた瞬間、

瑶季

「 あけましておめでとう!!柊くん、今年もよろしくね!!」

あけましておめでとう。こちらこそよろしく、瑶季」

日付が変わった瞬間に2人で新年の訪れを祝い合った。

柊はスマホを握りしめて、胸が熱くなった。

初めて、家族以外の人と「新年」を共有した瞬間だった。

感傷に浸っていると、瑶季の声が響く。

「ねえ柊くん、初詣、一緒に行かない?近くの神社で…一緒にお願いしようよ!」

柊は一瞬、息が止まった。

家族以外と初詣なんて、したことがない。

でも、瑶季となら…

「…行きたい。一緒に、初詣しよう」

瑶季

「やった!! じゃあ明日、午前10時くらいでどう?駅で待ち合わせね!」

その後も2人は深夜2時くらいまで通話を続けていた。

瑶季が眠気に負けて「じゃあ、私はそろそろ寝ようかな…明日、楽しみにしてるね。おやすみ、柊くん」と通話を切ったその後、柊は期待に胸を躍らせながら眠りについた。


元旦。

天気は快晴だが冷たい風が頰を刺す。

柊はコートを着込んで、約束の駅前に立っていた。

少し遅れて、瑶季が走って来た。

白いマフラーに赤いコート、手には小さな手袋。

息を白くしながら、笑顔で手を振る。

「柊くん、おはよう! 待たせちゃった!」

「いや、今来たばっかだよ。…明けましておめでとう」

「ふふ、明けましておめでとう!」2人は並んで、神社へ向かった。


参道は人で溢れ、鈴の音と拍手が響いている。

賽銭箱の前に並んで、2人とも5円玉を握りしめた。柊は目を閉じて、心の中で願った。

(瑶季と俺。2人とも第一志望に合格しますように。絶対に、受かりますように。…2人で、一緒の高校に行けますように。)

隣で瑶季も目を閉じている。もしかしたら、瑶季も柊と同じことを願っていたかもしれない。

賽銭を投げ入れて二礼二拍手一礼。

終わった後、2人は顔を見合わせて、少し照れくさそうに笑った。

瑶季

「おみくじ引こうよ」

2人は並んでおみくじを引く。

柊は「中吉」。

瑶季は「小吉」。

全体運は悪くないけど、恋愛運の欄を見た瞬間、2人とも慌てて隠した。

「…見せないでね?」

「うん、絶対秘密」

柊は自分の恋愛運の欄をチラッと見て、胸がざわついた。

「恋愛:急接近の予感あり。素直になれば吉」

瑶季も同じように、紙を折りたたんで鞄にしまった。

互いに、何も言わない。

でも、2人の間に流れる空気は、いつもより少し甘く、温かかった。帰り道、冷たい風の中を並んで歩く。

瑶季がぽつりと言った。

「絶対、一緒の高校行こうね」

柊は頷いて、

「うん…絶対」と返した。

言葉はシンプルだけど、心の中では同じ願いが重なっている。

瑶季の横顔を見ながら、柊は思う。

(瑶季と一緒にいられるなら、受験も、その先も、少し怖くないかも)


帰り道、瑶季がぽつりと言った。

「今日、来てくれてありがとう。なんか…すごく嬉しかった」

柊は足を止めて、瑶季の顔を見た。

「俺も…初めてだったから。家族以外と初詣なんて」

瑶季は少し驚いた顔をして、それから柔らかく微笑んだ。

「じゃあ、これからも毎年一緒に来よ? 約束ね」


初詣の朝は、そんな風に終わった。

2人の新年は、静かに、でも確実に始まっていた。

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