99. 【閑話】茶碗
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
海の離宮のペルラの部屋で、ディアバスとオーニチェとピレイは、ペルラが戻るのを待っていた。
「そう言えば、兄上、気になっている物があるのです」
「何だ?」
「あれです」
ディアバスは飾り棚の方を指さした。
大きな飾り棚には、茶碗が一個だけ飾られていた。
バサルク王宮にいた時に、ペルラが自室でお茶を飲むのに使っていた茶碗だった。
茶碗にはバサルク王家の紋章が大きく描かれていた。
「兄上、どうしてあんな物送ってきちゃったんですか?」
オーニチェは優しい表情で茶碗を見た。
「バサルク王宮滞在の思い出に決まっているだろう。
離宮に移ってすぐの頃だからな。
ペルラが泣いて喜んで飾ってくれたと聞いて安心したものだよ。
まさかお前と結婚することになるとは思わなかったしな。
何だ、お前にもやろうか?」
オーニチェは振り返ってディアバスを見た。
「僕はいいです。
そうじゃなくて、あの茶碗から、いつも兄上の視線を感じて、何だか落ち着きません!」
「考え過ぎだ」
「持って帰ってくださいよ〜」
「すでにペルラに贈った物だ。
それに、視線を感じるなら、いいことではないか!」
「どこがですか?」
ピレイが口を開く。
「ディアバス様、お兄様が見守ってくださっているのですよ」
「見守らなくていいです!」
「魔除けだと思ってはいかがでしょうか?」
「思えないです!」
オーニチェが頭を振った。
「魔除けを嫌がるなんて……」
「だからって、僕は魔物じゃない!」
オーニチェは笑った。
「あはは、宮廷の魔物なんて呼ばれているのは、ピレイの方だものな」
ピレイはオーニチェを無言で睨むと、笑顔でディアバスに向き直った。
「ディアバス様。念のため、割れ物のゴミの回収日カレンダーを今度お持ちしますね」




