97. 海の離宮編⑩ 確認
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
今日はオーニチェとピレイが離宮に来ていた。
話し合いのため、ディアバスだけ先にオーニチェに呼ばれていた。
「今日、後でペルラに結婚の意思の確認をするつもりだが、大丈夫なんだろうな?
ディア、今さらだがお前の妄想ってことはないんだろうな?」
「兄上、大丈夫です!
十回くらい確認しました!」
ディアバスは自信満々である。
「十回も?……
ペルラは本当に優しいな」
額を押さえるオーニチェの後ろで、ピレイもうなずいた。
ディアバスが急に神妙な顔になった。
「兄上、ムーンストーンの国王陛下から結婚の許可が出るでしょうか?
人質に後ろ盾ができたらまずいのでは」
「ペルラのベトーラ家に、後ろ盾という程の力はないだろう。
むしろ、バサルク王族にムーンストーン人のペルラを送り込めるのだから、ムーンストーン王は賛成するだろう」
ディアバスの顔がパッと明るくなった。
「なるほど! そうですね!」
「むしろ、問題はその後だろうな」
オーニチェは顎に手を当てた。
「後?」
「この際、お前にも言っておくか……。
今のままではペルラは第二王子妃だ。
ムーンストーン王の計画通り、ペルラを王妃にするにはどうしたらいいか?」
オーニチェはディアバスを見た。
「えっ? ペルラを王妃にするには?
……僕がバサルク国王になる!?」
「その通りだ、ディア。
私が死ねば、第二王子が王位継承権を得るだろうな?」
ディアバスの顔色が変わる。
「そんな! 僕は兄上を殺しません」
オーニチェはため息をついた。
「お前が私を殺すとは思っていない。
ただ、私が死ねば得する奴がいるという話だ」
「……はい」
「お前も他人事ではないぞ。
我々の母上はアルマンディンの貴族の生まれだ。
そもそもバサルク王家自体が、アルマンディンから来た一族だ。
つまり、私とお前はアルマンディン系のバサルク人だ。
そこに、ムーンストーン人のペルラが入ってくる。
王家に他国の血が入るのは昔からの常だが、アルマンディンの残党の過激派にしてみれば、お前とペルラの結婚はおもしろくないだろうな」
「そんな……」
「私にも、できることとできないことがある。
お前は確かに人質だ。
とは言え、私は軽々しくムーンストーンとの均衡を崩すつもりはない。
少なくとも、お前が恐れているような形で、お前を切り捨てることはしない」
オーニチェは一度言葉を切った。
「だが、私とお前が王太子と第二王子であることは、人質とは別の話だ。
バサルクにいる間は近衛をつけてやれるが、ムーンストーンに戻ってからも、お前とペルラの身辺、よくよく気をつけるように」
「……はい」
ディアバスが固い表情でうなずくのを見て、オーニチェは笑った。
「まぁ、程々にな。
ムーンストーンの王都の出入りは身分確認があるから、バサルクよりは安全だろう」
オーニチェはディアバスの肩に腕を回した。
「あ、今、バサルクの治安をどうにかしろよと思ったか? え?」
「いえ、思ってないです!」
「お前は安全なムーンストーン王都で新婚生活か?
私だってアルマンディンの隣から引っ越したいよ」
「兄上は是非ここで頑張ってください!」




