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94. 海の離宮編⑦ ノック

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

ペルラはディアバスの部屋をノックした。


「ディア、おはよう。起きてる?」


返事がない。


「入るよー」


ペルラはドアを開けた。

ベッドでディアバスはまだ寝ていた。珍しく寝坊だ。


ペルラはカーテンを勢いよく開けた。

日の光がディアバスの顔を直撃した。


「う……」


「ディア、朝よ」


ペルラがディアバスを揺さぶろうとした時、ディアバスの枕元に手紙があるのに気づいた。


その時、手紙に書かれた自分の名前が目に飛び込んできた。


「私の話……?」


ペルラは思わず手紙を手に取った。


「……次の縁談?」


ペルラの目が文字を追い始めた。


「うわっ!」


ディアバスの叫び声がした。


「ディア、いきなり大きな声を出さないで。

驚くじゃない」


「……そ、それ……」


ペルラが手紙から目を上げると、ディアバスと目が合った。


ディアバスが起きたようだ。


「ディア、おはよう」


ペルラは微笑んだ。


「手紙……」


ディアバスが力無くつぶやいた。


「これはどういうことなの?」


ペルラはベッドに乗ると、ディアバスにずいと詰め寄って、手紙を突き出した。


「……ペルラ宛の手紙は、夜にペルラの部屋の机の上に置いた」


「机はまだ見てないけど。

そうじゃなくて!」


最近、兄ベルデからの手紙は、だいたいディアバス宛と同じ内容であり、読まずとも内容の予測はつく。


「私は、ミリス様と結婚するの?」


手紙には、ペルラの新しい縁談について書かれていた。相手はミリスだ。


「え? いや、えっと?

さあ、あの、どうなんだろうな?」


ディアバスの目が宙を泳いだ。


「私、もう疲れたわ!」


ペルラは手紙を脇に置くと、ため息をついた。


「つ、疲れた?」


ディアバスは少し驚いたようだった。


「そうよ。私は家でのんびり平和に暮らしたいの」


「……」


「ねえ、ディアは私のこと、どう思ってるの?」


ペルラはディアバスの目を見た。


「ど、どう? どうって……あの……」


こんなに毎日一緒に暮らしているのだから、さすがに嫌ってはいないだろうとペルラは思ったが、ディアバスは混乱して即答できないようだった。


「私、ディアが嫌でなければ、ディアと結婚したい!」


ディアバスが息をのむのがわかった。


「……」


ディアバスは口を開いたが、言葉が出てこないようだった。


沈黙が流れた。


ペルラは急に不安になってきた。


「……ごめん、嫌だった?」


ペルラはベッドを降りた。


「突然こんなこと言って、ディアも困るわよね。ごめんね。

私、ちゃんとミリス様と結婚するわ。

だから……」


「いや、待て待て!」


ディアバスは大きな声を出すと、ペルラを抱き寄せた。


「俺と結婚するって、そう言ったか?」


「言った。でも嫌なら……」


「嫌じゃない! 嫌なわけないだろ!」


「そうなの?」


「結婚する。ペルラと結婚する」


「……」


ペルラはディアバスを見た。

ディアバスもペルラを見ていた。


「……言ったよな?」


ディアバスが不安そうに言った。


「言った」


ペルラはにっこり笑った。


「ディア、大好き!」


ペルラはディアバスを抱きしめた。


「俺も……」


その時、ペルラのおなかが鳴った。


「あっ!やだ……おなか空いちゃった。

ディア、朝ごはんにしましょう」


ディアバスはボーッとペルラの方を見ていた。


――まだ寝ぼけてるのね。


ペルラはベッドから立つと、腰に手を当てた。


「ほら! 早く起きて!

行くわよ?」

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