85. バサルク王宮編(28) 目を開けて
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ペルラは目を開けて、微笑んだ。
「オーニチェ様。おはようございます」
「おはよう、ペルラ。気分はどうだ?」
「いいですわ」
ペルラは小さな声で、ゆっくり話した。
「そうか……」
オーニチェは黙った。
ディアバスはその隙に果汁のコップをペルラに差し出した。
オーニチェはペルラの手を離した。
オーニチェとディアバスは、休み休み果汁を飲むペルラを見ていた。
「それを飲んだら、奥宮に戻ろう」
オーニチェが穏やかに言った時、ディアバスが声を張り上げた。
「ペルラ! ダメだ! ここにいてはダメだ!」
ペルラはコップを口から離すと、ディアバスを見上げた。
オーニチェは立ち上がると、ディアバスに顔を寄せて、小さな声で言った。
「ディアバス……!
お前、意味を分かって言っているのか?」
ここでペルラが奥宮へ戻らず、王宮を出れば、婚約は終わりである。
その時、ペルラがオーニチェの袖を引っ張った。
「オーニチェ様」
「どうした?」
オーニチェは表情を和らげると、再び寝台のそばへかがんだ。
「オーニチェ様。私、海の離宮へ行きますわ」
「海の離宮に?」
オーニチェは唐突に感じたが、数日前にピレイが海の離宮について話していたのを思い出した。
「離宮で、元気になって、戻って来ますわ。
だから、心配しないで」
ペルラはにっこり笑った。
オーニチェもつられて少し微笑んだ。
ペルラが心の底から言っているのが、オーニチェには分かった。
今日バサルク王宮を離れたら、婚約は破棄され、無関係の他国の人間が次に王宮に入る名目はない。
つまり、ムーンストーン人であるペルラが王宮に戻って来ることはない。
今回の転地療養がピレイの計画なら、ピレイはディアバスにも説明したはずだ。
だが、ペルラにはあえて伝えていないのだろう。
「……そうだな」
オーニチェはペルラの手を取ると、再び自分の頬につけた。
「ペルラが離宮に行きたいと望むなら、私が連れて行こう」




