79. バサルク王宮編(22) 朝の光の中で
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ディアバスがオーニチェと会うのは、襲撃があった後、初めてだった。
直後の朝食会は流れたので、数日ぶりだ。
今日はペルラへの面会を申し出るつもりだった。
このバサルク王宮において、兄の婚約者への面会を申請するか迷ったが、迷うくらいなら言ってみることにした。
いつも通り、王太子執務室の横の部屋に行く。
まだオーニチェは来ていなかった。
部屋を歩く。
床がギシギシと小さな音を立てて軋んだ。
この王宮は巨木の間に枝や蔓をかけて多層の回廊を作っており、編み込んで作られた床が鳴るのはいつものことだった。
ディアバスは窓際に立った。
見晴らしがよく、窓から熱帯雨林が見えた。
晴れていた。
風はあまりなく、日差しが暑くなり始めていた。
鳥の声と虫の声が聞こえた。
壁にもたれる。
壁も床同様枝や蔓で編み込まれており、ボコボコしていた。
編み込みといっても紙一枚すら通らないほどギッチリと編まれている。
見事なものだ。
ディアバスはなんとはなしに指で壁に触れた。
その起伏、木肌、長年の使用で擦れて現れた繊維が、幾重にもなって、人間を守り、閉じ込め、隔てていた。
不意に扉が開いた。
オーニチェが足早に入ってきた。
「すまない、待たせたな」
ディアバスは姿勢を正した。
「いえ」
「おはよう」
オーニチェがディアバスに微笑んだ。
「おはようございます」
ディアバスは軽く会釈した。
朝の光の中で、オーニチェの顔がよく見えた。
オーニチェも少し痩せたような気がした。




