76. バサルク王宮編(19) 剣の行方
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
広間の客を帰した後、ディアバスは自室のベッドに転がって、呆然と天井を眺めていた。
部屋は暗く、体は疲れていたが、なかなか眠れそうになかった。
部屋がノックされた。
「どうぞ」
視界に入ってきたのは笑顔のヴィレンスだった。
「お疲れ様」
「え?」
てっきり侍従だと思っていたディアバスは、ガバッと起き上がった。
「ヴィレンス?
お前、どこから……?」
襲撃のあった夜、第二王子であるディアバスの部屋周辺も警護が強化されているはずであった。
「それより、剣を返して」
ヴィレンスは小さな声で言った。
「あ、ああ。ありがとう。助かった」
ディアバスは、ヴィレンスに借りた長剣を渡した。
ヴィレンスは剣をゆっくり抜いた。
剣には血がべっとりと付いていた。
ヴィレンスはディアバスをジロリと見た。
「うわああ、すまん」
剣が錆びるため、その場で血はまず拭き取るように王立学校で習っていたが、ディアバスはすっかり忘れていた。
「鞘の方が問題だ」
鞘を洗って乾かすのは、剣より大変だ。
ディアバスは鞘を持った。
「何か、この鞘重くね? 兄貴の剣と同じだ」
「兄貴って、ベルデ・ベトーラ?」
「ああ。ベルデ様の剣も重い。
筋力訓練のためだって言ってた」
ディアバスはヴィレンスを見た。
「お前も鍛えてるの?」
ヴィレンスは少し笑った。
「ディアバスは、おもしろいこと言うね?」
「何が?」
「剣を重くしても、左右で重さが違って、体が歪むだけだよ」
「?」
ヴィレンスはディアバスの顔を見て、ニヤリとした。
「ふうん、ベトーラ家にいて、見たことないんだ?」
「何を?」
ヴィレンスは答えず、ディアバスから鞘を受け取った。
そして、鞘から細い短剣を抜いた。
「えっ!? 仕込み刀?」
ヴィレンスは短剣をひらりとディアバスへ向けた。
「貴様、見たな!」
「お前が見せたんだろ!」
ヴィレンスは少し笑うと、短剣を鞘に収めた。
「だから短剣も強いのか」
「なかなか便利だよ」
ディアバスはヴィレンスをゆっくり見た。
「……便利だった経験があるのか?」
「うん」
ヴィレンスはニッコリ笑った。




