67. バサルク王宮編(11) 樹冠庭園
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
朝の樹冠庭園に出ると、ペルラは冷たく清冽な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
「あ〜、気持ちいい!」
頭がスッキリして、体中に再び血が巡る気がした。
「樹冠庭園って、すてきなお庭ですわね」
木々の最上部の樹冠にかけられた空間、樹冠庭園は王宮の庭であった。
はるか遠くまで、広い熱帯雨林が見渡せた。
「そうか」
喜ぶペルラを、オーニチェは微笑んで見守っていた。
◇
バサルクでは、焚き火や香煙が一般的である。主に、虫除けや獣避け、湿気対策のためだ。
王宮や貴族の家だと、さらに儀礼や楽しみのためにも香煙を焚いている。
ペルラの侍女達も、朝は目覚めのために爽やかな香煙、夜は入眠のために落ち着く香煙など、様々に使い分けていた。
そのため、王宮にも常に、濃く薄く煙が流れていた。
しかし、樹冠庭園では、下から上がってくる香煙は全て風で流されて、空気は澄んでいた。
「あっ、そうだ! 花でしたわね。どこかしら?」
朝だけ咲く花が今見られると聞いて、オーニチェとペルラは樹冠庭園に来たのだった。
まもなく濃い霧が流れてきて、二人はたちまち白いモヤに包まれてしまった。
伸ばした自分の手も半分霞む程だ。道は全く見えない。
「ペルラ。こちらへ」
オーニチェはペルラの手を引いて、ゆっくり、しかし迷わず歩いて行く。
「不思議……雲の中を歩いているみたい」
ペルラが立ち止まると、オーニチェも立ち止まった。
見回しても、辺り一面が白い霧である。
ただ空の方だけが、白く鈍く明るい。
「そうですね」
「あっ! いけない。花がしぼんでしまいますね。
オーニチェ様、急ぎましょう!」
ペルラはオーニチェを見た。
オーニチェは少し笑うと、またゆっくり歩き出した。
「霧で濡れて滑りますから、ゆっくりで大丈夫ですよ」
◇
「わぁ、かわいい! 初めて見ました」
朝だけ咲く花は、無事まだ咲いていた。
花に夢中なペルラを、オーニチェは楽しそうに見ていた。




