62. バサルク王宮編⑦ 組紐
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
「あの……実は、最近組紐を作っているんです」
「そうか、組紐か」
オーニチェは微笑んで、ペルラに相槌を打った。
侍女からの報告で、王族教育の授業で見た、バサルクの組紐をペルラは気に入ったと聞いていたが、本当のようだ。
「これ、オーニチェ様をイメージして作りました。
下手ですが、もしよろしければ……」
ペルラがうつむきながら組紐を差し出した。
「私にくれるのか? ありがとう」
オーニチェは、手作り感満載の組紐を手に取った。
「きれいだな。大切にする」
オーニチェはペルラの目を見て言うので、ペルラは何だか恥ずかしくて、また目を膝に落とした。
「はい」
「ペルラ。やりたいことがあったら、何でも言ってくださいね」
「ありがとうございます。今も十分させていただいています。組紐の糸もすぐ準備していただいて」
オーニチェは笑うと、ペルラの手を取った。
「もっとわがままを言っていいのですよ。
私はあなたの願いを叶えたい」
「ありがとうございます。
でも、そんな……」
「そんな、なんて言わないでください。
ペルラの願いは私の願いです」
オーニチェはペルラを抱きしめた。
「ディアバスなんて、もっとわがままを言っていますよ?」
「ディアバス殿下が?」
ペルラは意外に思った。
ディアバスはわがままを言うタイプではないと思っていたが。
「ええ。剣の練習を増やしたいと言って、しょっちゅう練習場を使っています。
おかげで私は全然剣を振れません」
オーニチェはクスッと笑った。
「そうなのですね」
つられてペルラも笑った。
確かにディアバスは前から剣が好きそうだった。
「ディアバスはすることが多くて、剣ばかりやっている場合ではないのに」
「そうなのですか?」
やはり第二王子殿下となると忙しいのだろうか。
「毎日、朝から王族教育、午後にはお見合い、夕方には武術鍛錬です」
「お見合い……」
ペルラは無意識に復唱していた。
「ディアバスには、バサルク貴族の令嬢でいい方が見つかればと思っています。
その方が王家が安定しますから」
ペルラはオーニチェの腕の中で目を閉じた。
「ええ、そうですわね……」
◇
夜、ペルラはベッドから起きると、棚から箱を取り出した。
ペルラが寝たと思った侍女はすでに部屋から退出していた。
ペルラは、箱を開けた。
中には、組紐用の色とりどりの糸が入っていた。
糸の束は、気に入った配色があれば、紙の帯でまとめていた。
ペルラは、黒と青と銀の色の糸をまとめた束を、しばらく見つめていたが、おもむろに鋏で帯を切った。
黒と青と銀の糸の束が、それぞれバラバラに箱の中に落ちた。
ペルラは他の糸と同じように並べると、箱を閉じた。




