61. バサルク王宮編⑥ 侍女
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
「今日の授業で組紐を見ました。バサルクの組紐って、きれいですね」
ペルラは、髪を直してくれる侍女に話しかけた。
ペルラは、将来の王太子妃として必要な知識を学ぶため、王族教育を受け始めていた。
「はい。組紐を趣味にする貴族女性も多いですよ」
「そうなのですね。私も作ろうかしら」
「まあ、ペルラ様、すてきですわ。
早速、糸を取り寄せましょう。何色がよろしいですか?」
「そうねえ。私はパステルカラーが好きなんだけど……」
――ディアバスなら、黒と青と銀……。
ペルラは頭を振った。
「オーニチェ様に差し上げるなら、何色がいいかしら?」
「まぁ!」
侍女達は満面の笑みを浮かべた。
「ちょっと……何か恥ずかしい……」
ペルラがうつむくと、侍女達が必死に取りなした。
「ごめんなさい、ペルラ様!
私共は笑うつもりではなくて、うれしくて……応援したくて、つい……」
「わかってるわ。でも恥ずかしい」
ペルラは手で顔を隠した。
「恥ずかしくなんかありませんよ。オーニチェ様は旦那様になる方。
オーニチェ様はペルラ様のことをとても大切にされていますわ」
「そうですよ。あんな優しいオーニチェ様、私共も初めて見ます」
侍女の言葉に、ペルラが口を挟む。
「え? そうなの?」
侍女が手を振る。
「いえ、オーニチェ様は普段からお優しいんですよ。
下々の者にもよくしてくださいます。
そうではなくて、ペルラ様には特別なのです」
「そうです、本当にうれしそうな表情をされてますわ」
「ええ、ペルラ様が毎日どう過ごされているか、それはそれは心を配られていらっしゃいますわ」
そう聞くと、ペルラは余計に恥ずかしくて、すっかりうつむいてしまった。
「オーニチェ様なら、黒は外せませんわね」
「黒と合わせるなら、赤がいいですわ。愛の色ですし」
「バサルク王国の森の緑と、金色を入れたいですわ」
「ペルラ様の瞳の紫色と、髪の淡いミントグリーンの組紐も見てみたいですわ」
うつむいたままのペルラの後ろで、侍女達は盛り上がっていた。




