↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
60/141

60. バサルク王宮編⑤ 星

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

「ペルラ、ゆっくり。手をこちらに」


オーニチェが手を差し出した。


ペルラはその手を取り、ゆっくりと小船に乗り移った。


「きゃっ」


慎重に乗ったつもりだったが、船が揺れた。


「大丈夫ですよ。ゆっくり座ってください」


オーニチェに支えられ、ペルラは座った。


二人が座ると、船頭が船を出した。


先程、日が沈んだばかりだった。


空にはまだ紫色の薄明かりが残っていたが、熱帯雨林の中はもう暗い。


王宮の水路の水は、鏡のように穏やかだった。


頭上には、少しずつ星が増えていた。


「きれい……」


建物そのものが青白く光るムーンストーン王都では、なかなか見ることのできない暗さだった。


船が森の奥へ進むにつれて、空に残っていた紫色も消えていった。


星の瞬きが、水面に映っていた。


近くの木々から、ガサガサと音がした。


ペルラはびくっとした。


オーニチェがペルラを抱き寄せた。


「大丈夫ですよ。夜行性の生き物でしょう。この辺りに危ない獣はいません。近衛が毎日見回りをしていますので、安心してください」


「あ、ありがとうございます」


夜風は冷たかったが、オーニチェは温かかった。


オーニチェがペルラの手に触れた。


「寒かったですか? 気づかず、すみません」


「いえ、少し涼しいくらいでしたので、大丈夫ですわ」


「これを。風邪をひいたら大変です」


オーニチェは上着を脱ぐと、ペルラの肩にかけた。


「でも、オーニチェ様が寒いですわ」


「私は慣れているから大丈夫ですよ」


「そうですか? ありがとうございます」


やがて、船が静かに止まった。


辺りはすっかり暗くなっていた。


「ここに、ペルラに見せたいものがあるのです」


オーニチェの声はうれしそうだった。


ペルラもうれしくなった。


「まぁ! 何でしょう?」


オーニチェは岸から水面へ伸びている枝を一本折り、ペルラに渡した。


「この枝で、水面を叩いてみてください」


「……こうですか?」


ペルラが枝で水面を叩いた。


その瞬間、水中に無数の小さな青白い光が現れた。


船の周りだけ、水路そのものが光っているようだった。


「わあ!」


ペルラは息を飲んだ。


「すごい……」


しばらくすると光は消え、水路に闇が戻った。


「もう一度、叩いてみてください」


オーニチェが言った。


ペルラが水面を叩く。


また、無数の青白い光が現れた。


「きれい……不思議ですわ」


「水が揺れると光る生き物が、この季節はここにいるのです」


ペルラとオーニチェは、交互に何度か水面を叩いた。


そのたびに、暗い水路が青白く光った。



ディアバスは最近、短剣の練習を始めた。


バサルクにおいて短剣は重要であった。


ヴィレンスは、ディアバスが第二王子としてバサルクに馴染めるよう、必要なら手を貸すようムーンストーン王から命じられていた。


短剣の稽古も、その一つだった。


ディアバスが壁際まで追い詰められたとき、ふと窓の外に人影が見えた。


ずっと下の方に、オーニチェとペルラらしき二人がいた。


水路の船から降りてきたところらしい。


暗いうえに距離があり、顔までは見えない。


それでも、周囲にいる近衛の人数からして、間違いないだろう。


――こんな夜に、どこへ出かけていたんだ?


その瞬間、ディアバスの短剣が弾き飛ばされた。


「あ……」


ヴィレンスの木製の短剣が、ディアバスの喉元に突きつけられていた。


またディアバスの負けである。


ヴィレンスはにっこり笑うと、パタンと窓を閉めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。