59. バサルク王宮編④ りんご
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
「うーん。別に、りんごでなくてもいいのにねえ」
アルモンドは言った。
今日の昼食は、部屋で食べていた。
デザートはりんごだった。
十分おいしい。
ただ、ムーンストーン王国で食べるものに比べると、わずかに水分が抜けていた。
バサルク王国には、おいしい南国の果物が山ほどある。
なぜわざわざ、バサルクでは採れないりんごを出すのだろう。
「オーニチェがペルラのために取り寄せた」
ヴィレンスが言った。
「なるほど」
アルモンドは、もう一切れりんごを食べた。
「私たちはご相伴にあずかっているわけですね」
ムーンストーン王国では、りんごはごく一般的な果物だった。大きな産地もある。
ペルラのホームシックを和らげるために、故郷で食べ慣れたりんごを取り寄せたのだろう。
なかなかいい話である。
◇
「殿下は、りんごはお好きではありませんでしたか」
侍従に声をかけられ、ディアバスは我に返った。
「いや、そういうわけではない」
ディアバスは、昼食のりんごに楊枝を刺した。
刺したところから、果汁があふれて、静かに流れた。
ペルラは果物なら何でも好きだった。
りんごも好きだった。
ただ、生で食べるより、ディアバスが焼くりんごケーキの方がおいしいと言っていた。
ペルラは、りんごの皮がない方が好きだ。
それでも、急いでいて皮を剥かずにケーキへ入れたときには、
「皮があるのも、かわいいからいいね」
と言って食べていた。
ペルラは、りんごケーキにバニラアイスを乗せるのが好きだった。
アイスを乗せないディアバスにも、毎回「アイス乗せる?」と聞いてきて、面倒くさかった。
ディアバスは、りんごを見た。
楊枝の穴から流れた果汁はすでに止まって、りんごの表面はまた少し乾いていた。
ディアバスはりんごを食べた。




