48. ジュニパー編⑤ 届け物
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ぺルラの部屋のドアがノックされた。
「はい」
ディアバスが出ると、寮の管理人だった。
管理人は宝石店の店主を連れてきていた。
宝石とは無縁のディアバスですら知っている、超有名高級宝石店だった。
「ベトーラ家ご令嬢ぺルラ様へ、ジュニパー・ムーンストーン王子殿下からのお届け物でございます」
店主は頭を下げた。
「お届け物?」
「昨日、当店にお越しいただき、ご注文いただきました。どうもありがとうございました」
「え? 注文?」
ディアバスの動揺を店主は察した。
「お代はすでに殿下からいただいております」
「そう、それなら良かった……って、え?」
ディアバスがぺルラに詳細を確認するより前に、店主は手伝いの者と共に大きい箱をいくつか部屋に運び込んだ。
「え? え、これ全部? 宝石?」
店主は再び頭を下げた。
「これで全てでございます。またのお越しを心よりお待ちしております」
唖然とするディアバスを置いて、店主達は寮の管理人と共に去っていった。
◇
「ぺルラ!どういうことだ!」
ディアバスは玄関から部屋の奥に戻って、ぺルラを呼んだ。
ぺルラはバルコニーで植物に水やりをしていた。
「なあに? どうしたの?」
ディアバスは玄関に積まれた箱を指差した。
箱を開けると、中身はやはり全て宝石の装飾品であった。すごい量である。
店の商品を全て買い上げたのだろうか。
「どうしてかなぁ? 私は欲しいとか、買ってとか言ってないんだけど」
「いやいや、よーく思い出せ。何かあったはずだ」
ぺルラの兄ベルデに即報告しなければならない。
ディアバスは宝石の価値に全く詳しくなかったが、中堅貴族ベトーラ家であれば数十年かかっても買い揃えられない量だと思われた。
――第二王子というのは、そんなに自由になるお金があるものなのか。
さすが大ムーンストーン王国と言われるだけある。
ディアバスも第二王子だが、ずいぶんな違いである。
「うーん。宝石店に行って、ジュニパー様にカフスを選んでって言われて」
「うん」
「ジュニパー様にカフスを選んで差し上げて」
「うん」
「お店が飲み物とお菓子を出してくれて」
「うん、そこはいいから」
「選んだお礼に私にプレゼントしてくださるって言うから、お断りして」
「うん」
「試しにつけるだけつけてみてって言われて」
「うん」
「色々つけて、感想聞かれて」
「うん。
で、何て言ったの?」
「きれいですね、すてきですね、って」
ディアバスは頭が痛くなってきた。
「ほめたんだな? そうなんだな?」
「そう、ほめた」
「ぺルラは、数日前にも同じようなことを言ってなかったか?」
ピアノ練習開始と同じ展開である。
「あっ!そうかも……
ディア、どうしよう」
「どうしようって言われても、俺もわからん」
二人は無言で宝石の箱を見つめた。




