47. ジュニパー編④ ここまで
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
今日はピアノはここまでにしませんか」
ジュニパーがにっこり笑った。
ピアノにやや疲れていたぺルラは、願ったり叶ったりだ。
「ええ、わかりました。では」
「今日は天気がいいから……」
ジュニパーは窓の外を見て、目を細めた。
ぺルラもつられて窓の外を見た。
「少し街に行きませんか」
「あ……」
今までぺルラが寮から出る時は、必ずアーバスことディアバスが付き添っていた。
――少しくらいならいいかな?
ジュニパー殿下と行くなら近衛も一緒だから安全だろう。
「アーバスが気になるのですか」
ジュニパーがぺルラに優しい視線を投げかけた。
「え、ええ」
ぺルラは少し気まずくてうつむいた。
「ぺルラ、僕にあなたの美しい顔を見せて」
「えっ、そんな、あの」
ぺルラは顔を上げた。何だか恥ずかしい。
ジュニパーは近くの鉢植えの花を手折ると、ぺルラの髪に挿した。
「似合います」
「あ、あの、ありがとうございます」
「聞かせてくださいませんか。
アーバスはあなたにとって、どんな存在なのですか?」
ぺルラは困った。色々なことが頭を駆け巡った。ディアバスのことなら無限に喋れそうだった。
「一言で言うなら、兄ですわ」
ぺルラは笑顔で答えた。
「そうですか」
ジュニパーも柔らかく笑った。
ジュニパーは使用人を呼ぶと、ぺルラの外出をディアバスに伝言させた。
「ありがとうございます」
「気にしないで。僕の都合に付き合ってもらうのですから、それくらい当然ですよ」
ディアバスも知っているなら、心置きなく外出できる、とぺルラは思った。スッキリした。
「ねえ、ぺルラ、もう一つ質問してもいいですか?
イグニス・コンミフォラはどんな存在なのですか?」
「イグニス様ですか……」
ぺルラは考えた。これはちょっと難しい。
カッコよくて、優しくて、博識で、植物の相談ができて、おもしろい人である。
自分の好きなことを喋る時の、イグニスの輝く紫色の瞳を思い出した。
ペルラの瞳の濃い紫色とは別の、すみれ色だ。
好きな物に一直線に走っていく時に揺れる、淡い紫色のロングヘアも。
「憧れの方でしょうか?」
言ってしまった。恥ずかしい。
「なるほど……そうですか、憧れの方なのですね……」
「はい」
念押しされて、二倍恥ずかしい、とぺルラは思った。
「あ、あの」
「大丈夫ですよ。誰にも言いませんから。
さぁ、馬車の準備ができたみたいです。行きましょう」
ジュニパーは優しく言うと、ピアノのカバーを閉じた。




