44. ジュニパー編① 金色の缶
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
「これ、プリズマのお土産です。お口に合うとよいのですが」
ペルラは、プリズマ特産のお菓子をジュニパー第二王子に差し出した。
「ありがとうございます」
ジュニパーが包装紙を開く。
きれいな海が描かれた紙の中から出てきたのは、金色の缶だった。色ガラスがステンドグラスのように埋め込まれている。
蓋を開けると、中には虹色の泡のような砂糖菓子が並んでいた。
「とてもきれいだね。どうもありがとう」
ジュニパーは微笑んだ。
「では……」
ペルラが立ち上がろうとすると、ジュニパーが口を開いた。
「プリズマはどうでしたか」
立ち上がりかけたペルラは、もう一度ソファに腰を下ろした。
「ええ、とても楽し……」
プリズマへ行っていないジュニパーに、楽しかったと言うのも何だか悪い気がした。
「ムーンストーンとは街も食べ物も文化も違って、とても興味深かったですわ」
「巡航都市プリズマですか。何百年も動いている船というのは、すごいですね」
「はい」
しばらく沈黙が流れた。
ペルラは会話の糸口を探した。
「シナモン王太子殿下も、ご立派でしたわ」
「……そうでしたか」
また沈黙になった。
寮のどこかから、生徒たちの騒ぐ声がかすかに聞こえてくる。
「あの、私……」
そろそろ失礼しよう。
ペルラがそう思ったところで、ジュニパーが口を開いた。
「お礼に、一曲弾きます。聞いてくれませんか」
「え、ええ。楽しみですわ」
ジュニパーに案内され、ペルラは隣の部屋へ移った。
寮とはいえ、王族用の部屋は特別らしい。いくつもの部屋があり、その一室には白いグランドピアノが置かれていた。
ジュニパーは椅子に座ると、ピアノを弾き始めた。
ペルラは自然と目を閉じ、流れる音に耳を傾けた。
やがて最後の音が消え、ペルラは目を開けた。
「すばらしかったですわ!
何か、軽やかな水しぶきと、広い海を感じました。
……間違っていたら、すみません」
「いいえ、その通りです。ペルラにもらったお菓子を思い浮かべて弾きました」
ジュニパーは微笑んだ。
「よかった。的外れだったらどうしようかと思ってしまいました」
「曲の解釈に的外れなんてありませんよ、ペルラ。あなたの感性はすばらしいですから、自信を持ってください」
「いえ、そんな」
「僕はあなたの弾く曲も聞きたい。ダメですか?」
ピアノの椅子に座ったまま、ジュニパーはペルラを見上げた。
「いえ、私は全然……」
ペルラも貴族令嬢として、幼い頃にピアノを習っていたことはある。
しかし、出来のよい生徒ではなかった。
それに、もう何年も弾いていない。
「僕が教えますよ。一緒に弾きましょう」
ジュニパーは立ち上がった。
「さあ、どうぞ座ってください」
「え? ええ……」
ペルラはピアノの椅子に座った。




