42. 巡航都市プリズマ編⑧ お土産
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
プリズマを発つ前日の午後。
ペルラはディアバスと土産物の店を見て回っていた。
「ねえねえ、ディア。ジュニパー様には何がいいかな」
「何でもいいんじゃね?」
「ちゃんと考えて」
「えー。じゃあ、レッツゴー!プリズマンまんじゅう、アイラブプリズマTシャツ、プリズマ太郎のぬいぐるみ」
「ちょっと! ディア!」
一応、王子に渡すものなのだから、あまり変な物を選ぶわけにもいかない。
ベトーラ家の信用に関わる。
ペルラが店の中を見回していると、少し先に淡い紫色の髪が見えた。
顔がぱっと明るくなる。
「イグニス様!」
イグニスが振り返った。
「ペルラ」
ペルラはすぐにそちらへ向かった。
「何を見ていらしたのですか?」
「いろいろ。ここ、おもしろい物がいっぱいだね」
「本当に。
あ、今、ジュニパー様へのお土産を探しているんですけど、何がいいと思いますか?」
「ジュニパー?」
「はい。せっかくですから、プリズマらしいものがいいなと思って」
イグニスは辺りを見回した。
「これは?」
青緑色のガラス管がついた、大きめの金属の物体を手に取る。
「何ですの?」
「プリズマで使う部品。ムーンストーン規格の管と、アルマンディン規格の管をつなぐ部品なんだ。さすがだよね。途中がガラス管になっているから、中も見える」
「わあ!」
ペルラがうれしそうに覗き込んだ。
「プリズマ公式の刻印入りだ」
イグニスが部品をひっくり返した。
金属部品には、プリズマの紋章が刻まれていた。巨大な船を囲むリボンには、『自由、独立、プリズマ』と記されている。
「すてき!」
よく磨かれた部品表面のプリズマの刻印が、光を反射してキラリと光った。
「だろう? さっき見つけて、実は僕も買おうと思ってたんだ」
「では、これにします!」
ペルラは部品を買い物かごに入れた。
ずっしり重い。
「待て待て」
それまで後ろから黙って見守っていたディアバスが口を開いた。
「何よ?」
「ジュニパー様、それもらってどうするんだ?」
ペルラは金属部品を見た。
「……管をつなぐ?」
「……ムーンストーン王都にはムーンストーン規格の管しかないし、ジュニパー様は自分で工事しないだろ?」
「……眺める?」
「たいていの人間は部品を飾って眺めたりしない」
「……」
ペルラは部品を棚に戻した。
さらに店の奥へ進む。
「あっ」
ペルラが足を止めた。
大きなガラスの彫刻が飾られていた。
何色ものガラスが複雑に組み合わされ、光を受けてきらきらと輝いている。
「きれいですわね」
「うん」
イグニスも近づいた。
「この部分、どうやってくっつけているんだろう」
ペルラが明るい声を出した。
「これ、お兄様へのお土産にどうかしら」
イグニスも笑顔になる。
「いいねえ! ペルラ、センスあるね!」
「えっ!本当ですか?
イグニス様に『センスある』って言われて、私うれしいです」
「うん、本当だよ」
「そんな。ちょっと恥ずかしい」
ペルラは顔を赤らめながら彫刻を見上げた。
「では、これにしま……」
横で黙って見守っていたディアバスが口を開いた。
「待て待て。
それ買ったら、誰が持つんだ?」
ペルラは改めて彫刻を見た。かなり大きい。
視線はそのままディアバスに移動した。
「……ディア? かも?」
「……却下!」
「えー」
「『えー』じゃない」
ディアバスは、ペルラとイグニスを見た。
――この二人を一緒にしておくとろくなことにならない。
「ペルラ。こっちにプリズマのお菓子を売ってる店があったぞ」
「プリズマのお菓子?
絶対チェックしないと」
ペルラは足早に歩き出した。
ディアバスはイグニスを見る。
「イグニス様。あっちに伝統薬の店がありましたよ」
「すごい! 探してたんだよ。ありがとう!」
イグニスもすぐに向かった。
ディアバスは土産物屋を出て、ペルラを追う。
――疲れる……。
ディアバスの奮闘により、結局、ジュニパーへの土産はプリズマの菓子に、ベルデへの土産はガラスを使った小さな置物に無事落ち着いたのだった。




