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36. 巡航都市プリズマ編② プリズマ

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

王都中央駅のホームでは、アルモンドが名簿を確認しながら、学生たちを次々と車内へ案内していた。


今回の研修旅行では、企画から日程調整、宿泊先や移動手段の手配まで、アルモンドがほとんど一手に引き受けていた。


その近くではシナモン王太子が乗車口の横に立ち、一人一人に笑顔で声をかけている。


少し後ろには、護衛のヴィレンスが静かに控えていた。


「おはよう! 今日はよろしく!」


声をかけられた生徒も、自然と笑顔になって列車へ乗り込んでいった。


ペルラたちも挨拶をして、車内へ入った。


「シナモン様とお話ししてしまいましたわ」


「私も!」


ペルラとアクアが顔を見合わせる。


ルビーは席に座ると、荷物を脇へ置いた。


「私、寝るから。着いたら起こして」


「もう寝ますの?」


「今日、朝早かったから」


そう言うなり、ルビーは目を閉じた。



列車が王都を離れてしばらくすると、シナモンはアルモンドを連れて特別室を出た。


今回の研修旅行を主催する王太子として、参加する学生たちと親睦を深めるのも大切な役目だった。


扉の前には、ヴィレンスが立っていた。


シナモンが出てくると、いつもの無表情で一礼する。


シナモンも軽く手を上げ、その横を通り過ぎた。


いくつかの車両を回り、学生たちと話していると、ルビーの声が聞こえた。


「ペルラって、ベルデ様と似てるよね。やっぱり兄妹だから?」


先ほど通った時には寝ていたが、起きたらしい。


「え? お兄様と似てる?」


ペルラは自分の頬に手を当てた。


「なんか、うれしいような、嫌なような……」


「嫌って、ベルデ様に失礼ですわよ?」


アクアが笑う。


「えー、だって〜」


三人が笑った。


シナモンもつられて笑いかけ、ふと弟の顔を思い浮かべた。


自分とジュニパーも、顔はよく似ている。


けれど、二人がこうして他愛のない話をすることはなかった。


王宮でも住まいは分けられ、顔を合わせても挨拶を交わす程度だった。


それは昔から変わらない。



一通り車内を回り、シナモンはアルモンドと特別室へ戻った。


中では、ユーカリが待っていた。


ユーカリ・アデュラリアは、国内随一の大貴族アデュラリア家の跡継ぎで、シナモンとは幼いころから一緒に育った。


アルモンド・サイデライトは宰相の息子で、生徒会長を務めている。後からシナモンたちの輪に加わり、今ではこうしてそばにいるのが当たり前になっていた。


シナモンは自分の席へ座りながら、二人を見る。


父は王太子である自分に、多くの人間と関係を築くことを求めてきた。


ジュニパーは違う。


もし自分が数年遅く生まれていたら。


今日、王都に残っていたのは自分だった。


プリズマへ向かう列車にも乗らず、ユーカリやアルモンドがこうしてそばにいることもなかっただろう。


それは、ジュニパーだからではない。


第二王子とは、そういう立場だった。


シナモンは先ほど扉の前に立っていたヴィレンスを思い出した。


ヴィレンスが近衛の中でも特に優秀であることは、シナモンも聞いている。


何がどう優秀なのか、詳しいことまでは知らない。


それでも、父が王太子である自分を守るため、わざわざヴィレンスをつけたことは分かっていた。


父は、自分を失わないために最善を尽くしている。


それでも、自分を失った後のことにも備えている。


そのためにジュニパーは、今日王都にいる。


シナモンは窓の外に目を向けた。


王都からずいぶん遠くまで来ていた。



やがて列車は港近くの駅へ到着した。


駅を出ると、潮の匂いがした。


港には何本ものレールが走り、木箱や樽を載せた台車が行き交っている。


岸壁と船の間には大小さまざまな橋が複雑に架けられ、頭上には何本ものケーブルが渡されていた。


巨大なクレーンが、海に沿って整然と並んでいる。


岸壁の向こうに、巨大な船が停泊していた。


暗い銅色の船体は、ペルラがこれまで見たどの船よりも大きかった。


その上には、大小さまざまな建物がひしめくように建っている。


塔や丸屋根があり、形の違う建物がその隣に建ち、さらにその上へ別の階が足されているところもある。


建物と建物の間には、通路や小さな橋が渡されていた。


建物には青緑色のガラスがふんだんに使われ、日の光を受けてきらめいている。


一行は、プリズマへ続く大きな橋を渡った。


入国の手続きを済ませると、ペルラたちはプリズマへ入った。


そこでは、現地の案内係が出迎えてくれた。


王都とは、まるで違った。


建物の形も、高さも、使われている材料も揃っていない。


古そうな金属の壁の隣に青緑色のガラスがあり、その向こうにはまた違う造りの建物が建っている。


行き交う人々の姿もさまざまであった。


案内係がプリズマについて説明を始めた。


「ようこそ、巡航都市プリズマへ」


それから、都市の成り立ちを説明した。


プリズマの始まりは、旧アルマンディン大陸王国が成立する以前まで遡る。


当時、大陸沿岸部には小さな港湾国家や交易都市が数多く存在していた。


後に大陸中央部から勢力を伸ばしたアルマンディンが沿岸部まで統一していく中で、海へ逃れた人々の船団があった。


その一部が、プリズマの原型だと言われている。


「最初から都市だったわけではありません」


案内係は言った。


「始まりは小さな船団でした。それを一つの船体へと造り替え、何百年もの間、増築と拡張を繰り返してきたのです」


アルマンディンが大陸規模の交易圏を築いた時代には、今度はアルマンディンの商人や技術者もプリズマへ集まった。


ムーンストーンをはじめ、他の国から来る者も増えた。


そしてアルマンディン大陸王国がムーンストーン王国との戦争に敗れ、大陸の情勢が不安定になると、再び多くの人々がプリズマへ流れ込んだ。


「そうして、さまざまな国や時代の文化が混ざり合い、現在のプリズマが形作られていったのです」


生徒たちは案内係について街を歩いた。


古い建物と新しい建物、違う色や形の建物が雑多に並んでいた。


通りには、色とりどりの布を屋根のように張った店も並んでいた。


やがて、細い道に入った。


ペルラは上を見た。


頭上にも通路があり、さらにその上にも建物が見えていた。

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