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35. 巡航都市プリズマ編① 出発

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

プリズマへの研修旅行を翌日に控え、ペルラとディアバスは王立学校の寮から自宅へ戻っていた。


巡航都市プリズマ。


巨大な船がまるごと一つの都市であった。


世界の海を巡るプリズマが、数年ぶりにムーンストーン王国の領海へ入った。それに合わせて、王立学校では希望者の研修旅行が行われることになったのだ。


ベルデは先ほどから、旅先で気をつけることを細々とペルラに言い聞かせていた。


「いいか、ペルラ。プリズマはムーンストーンじゃない。外国なんだからな」


「まあ、お兄様は心配性ね! 外国も同じ人間が暮らしていますわ」


「……」


ベルデは、出発の朝、中央駅まで見送りに行くつもりだったらしい。


ところが仕事で呼び出され、行けなくなってしまったという。


「ああ、やっぱり駅までは行きたかった。お前、列車に乗るのも初めてだろう」


「大丈夫よ、お兄様。

確か、えーと、そう、二番線か十二番線から乗りますの」


ベルデが黙った。


ディアバスも固まった。


「ペルラ。二番線と十二番線じゃ全然違うだろ」


「ちょっと似ているんですもの……」


ペルラは視線を逸らした。


「……」


ベルデは額を押さえた。


すぐ顔を上げる。


「ディアバス!」


「十二番線ですから、ご心配なく」


「……ペルラを頼んだぞ」


「はい」


ベルデは深いため息をついた。


「お兄様」


「ん?」


ペルラが満面の笑みで言った。


「お土産楽しみにしていてくださいね」


そのとき、ベルデは寒気を感じた。


「なんか寒い……風邪か? 俺はもう寝る。ペルラとディアも早く寝ろよ」


ベルデは寝室に消えて行った。



翌朝。


王都中央駅は、ペルラが想像していたよりずっと広かった。


十二番線に着くと、準備万端のアクアがすでに待っていた。


ペルラとアクアが話していると、やがて、ルビーが兄ミリスとともにホームへ姿を見せた。


互いに朝の挨拶を交わしたあと、ミリスがペルラに声をかけた。


「ペルラ様」


ミリスがお菓子の小さな包みを差し出した。


「よろしければ、道中で召し上がってください。苺がお好きだと伺いましたので」


「まあ、おいしそう! ありがとうございます」


ペルラの顔が明るくなる。


ディアバスは隣で黙っていた。


――ペルラは、苺に限らず果物なら何でも喜んで食べるけどな。


ミリスはアクアとルビーにも渡した。


ルビーは受け取るなり包みを開けて、食べ始めた。


「うん、おいしい」


「えっ、もう食べるのか……」


ミリスは妹にやや驚いた後、アーバスことディアバスを見た。


「ああ……、アーバス様も行かれるのでしたね」


「はい」


ミリスは笑顔でもう一つ包みを出した。


「これ、どうぞ。お気をつけて」


「……お気遣い、ありがとうございます」


ディアバスは丁寧に礼を言うと受け取った。


ミリスはすぐにペルラへ向き直った。


「帰ってきたら、ぜひプリズマの話を聞かせてください」


――プリズマの土産話なら妹に聞け。


ディアバスの内心をよそに、ペルラは一瞬考えてにこやかに答えた。


「ええ。またお会いしたときに」


ミリスは微笑んだ。

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