34. イグニス編⑨ 温室
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ペルラは温室に来ていた。
お目当ての花を探していると、ジュニパー第二王子がいた。
「ジュニパー殿下、こんにちは」
よく見ると、今日も近くの木の陰に近衛がいた。
「ああ、こんにちは、ペルラ嬢。時計台以外で会うのは初めてだね」
ジュニパーは優しく微笑んだ。
「そうですね」
「今日はどうしたの?」
「珍しい花が咲いたと、イグニス様に伺い、見に参りました」
「ああ、それのことかな」
ジュニパーはそばの花を指差した。
確かに、イグニスの言っていた特徴と一致する。
「きっとこれですわ」
よく見ようと、ペルラは花に体を近づけた。
「痛っ」
肩が鋭い葉に当たり、切れたようだ。
「待って、血が出ている」
ペルラが見るより先に、ジュニパーはすぐにハンカチを出して、ペルラの肩を押さえた。
「殿下、すみません。後は私が……」
「いいよ、大丈夫。血はほんの少しだけど、念のためしばらく押さえておこう。あそこのベンチに移動できる?」
ペルラとジュニパーはベンチに移動した。
「ありがとうございます。あの……」
「ペルラ。気にしないでいいから、じっとしていて。ハンカチがずれちゃう」
「すみませんっ」
焦るペルラを見て、ジュニパーは笑った。
ジュニパーの、ミルクを溶かしたような淡い茶髪が、昼の光の中でキラキラと輝いていた。
「あの……」
「ん?」
「もうすぐ巡航都市プリズマへの研修旅行ですね。楽しみですね」
「ああ……僕は行かないことになってるんだ」
「えっ、そうなんですか? すみません……」
「いいんだよ、謝らなくて。知らなかったんだし。ペルラはさっきから謝ってばかりだね」
ジュニパーはまた笑った。
「さあ、もういいかな?」
ジュニパーがハンカチを取ると、血は止まっていた。
「ありがとうございます。あの、ハンカチ、洗います……」
「ハンカチ? 気にしないで」
「いいんですか? 汚して、すみません」
「また謝った! いいんだよ。プリズマ旅行、楽しんできてね」
「はい。どうもありがとうございます。では、私、次の授業がありますので、お先に失礼いたします」
「はいは〜い、またね」
ジュニパーはひらひらと手を振った。




