33. イグニス編⑧ 鍛錬場
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
「じゃあ、早く寝るんだぞ」
ディアバスが言うと、ペルラが応えた。
「うん。ディア、おやすみなさい」
「おやすみ」
ディアバスはペルラの部屋のドアを閉めた。
◇
ディアバスの行き先は、自室のベッドではなく、鍛錬場だ。
今日は色々あって、すっかり遅くなってしまった。しかし、ペルラの兄の騎士ベルデの教え通り、剣は毎日練習が大事だ。
――暗くなってしまったが、少しだけ練習しよう。
王立学校の屋外の鍛錬場は24時間利用可能だが、夜は壁沿いに少しランタンがあるだけでかなり暗いので、利用する学生はほとんどいない。
鍛錬場に向かって歩いていくと、暗がりの中で金属剣の反射が時折動いて見えた。
――上級者か?
剣術の授業では、まだ全員木剣を使っている。
ディアバスは家でベルデに剣の手ほどきを受けていたが、その時も木剣しか使ったことがなかった。
鍛錬場に入って、ディアバスは納得した。
ヴィレンスが立っていた。
ヴィレンスはシナモン王太子の護衛だ。入学前、ベルデから「ヴィレンスを昼飯に誘え」と言われていたこともあり、学校ではすでに何度か顔を合わせている。
ただ、ほとんど喋らないので、どんな人物なのかはまだよくわからない。
「どうぞ」
自分の練習は終わったから、鍛錬場は自由に使え、ということのようだ。
「ありがとうございます」
ディアバスは軽く会釈すると、木剣を手に取って振り始めた。
護衛が本職の彼なら、金属剣で練習していても不思議ではない。
ヴィレンスは壁際で水を飲んで、少しだけディアバスを見ていたが、ディアバスが次に見た時にはいなくなっていた。




