27. イグニス編② アクア
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
「まあ! イグニス様がペルラの憧れの方なのですね」
今日はアクアがペルラの部屋にお茶に来ていた。
アクアとは入学式で席が隣になり、そこから仲良くなった。
「そうなの。あのクールな感じがたまりませんわ!」
ペルラは、イグニスの美しい紫色の瞳を思い出した。
ペルラ自身の瞳も紫色である。
瞳の色が同じなんて、ますます運命ではないだろうか。
「クール……」
アクアは言葉を濁した。
先日、中庭の木に登っていたイグニスを見かけたからだ。
珍しい虫がいて、捕まえたかったらしい。
王立学校の中庭で、かなり目立っていた。
「でも、イグニス様は時々お休みされるのよね。
お体が悪いわけではないみたいだけど、何かお忙しいのかしら。
なかなかお姿が見られなくて残念ですわ」
ペルラは紅茶を一口飲んだ。
今日もディアバスが淹れた紅茶はおいしい。
テーブルには、りんごのケーキもあった。
アクアが急に部屋へ来ることになったので、お菓子の準備がなかったのだが、ディアバスが急いで焼いてくれたのである。
ペルラのお気に入りでもある。
ペルラは、寝室へ続く扉をちらりと見た。
寮の部屋には控えの部屋がないので、ディアバスはアクアに挨拶をしたあと、寝室へ引っ込んでいた。
アクアを迎える準備でバタバタさせてしまった。
ディアバスには、ベッドで少しゴロゴロして休んでいてほしい。
◇
一方、寝室のディアバスは休んでいなかった。
部屋を軽く掃除し、ベッドを整えたあと、筋トレをしていた。
今は剣の素振りをしている。
壁の向こうから、ペルラとアクアの楽しそうな声が聞こえてきた。
何よりだった。
別に聞くつもりはないのだが、壁一枚なので丸聞こえである。
「ペルラ、そういえば化学の授業を取ったらいいですわ」
「化学?」
「化学って、泡をブクブクさせたりする……?」
「私も化学はよく知りませんの。でも、化学講義と化学実験の授業は、毎年イグニス様のお父様のコンミフォラ卿が講師をされているはずです」
「そうなの?」
「イグニス様は、入学前から授業をお手伝いされていたそうですよ」
「ということは、イグニス様に会える!?」
「きっと会えますわよ」
二人の盛り上がる声が聞こえる。
ディアバスは剣を振りながら考えた。
ベルデに報告したら、『化学実験の授業なんて危ない』と小言を言われること請け合いである。
ディアバスは素振りをやめ、床にゴロンと寝転がった。




