24. ミリス編⑨ 香水
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
数日後。
王都守備隊の執務室で、ベルデは机に積まれた書類に目を通していた。
「おはようございます」
ミリスが入室してきた。
「おう。おはよう」
ミリスは手にしていた書類を差し出した。
「昨日の件ですが、こちらで確認したところ……」
ふわりと香った。
ベルデの手が止まった。
みずみずしく、ほのかに甘い花の香り。
ペルラが最近使っている香水と同じ香りだった。
「それで、こちらが修正後のものです」
「あ、ああ」
ベルデは書類を受け取った。
また香った。
間違いない。
――なんでミリスからペルラの香りがするんだ。
市販されている香水なのだから、同じものを使う人間がいても不思議ではない。
男が花の香りを身につけることも、別段珍しくない。
しかし。
――よりによって、今?
ベルデは退室するミリスを見送った。
◇
その日の夜。
「なあ、ペルラ」
夕食後、ベルデは居間で本を読んでいた妹に声をかけた。
「なあに?」
「今日、ミリスに会ったか?」
ペルラが本から顔を上げる。
「ミリス様? 会ってないよ。
この前、お兄様がお断りしてから会ってないけど……」
「そうか」
「どうしたの?」
「いや。何でもない」
ベルデは少し離れたところにいたディアバスを見た。
「ディア」
「はい?」
「今日、ミリスからペルラと同じ香りがしたんだけど」
ディアバスの動きが止まった。
「……」
ベルデはその反応を見逃さなかった。
「何か知ってる?」
ディアバスは少し迷ってから答えた。
「……この前、王宮で会った時に、ペルラの香水の店を聞かれました」
「ミリスに?」
「はい」
ベルデは黙った。
「それで?」
「教えました」
「……そうか」
「隠すようなことでもありませんし……」
「まあ、そうだな……」
それはベルデにも分かる。
香水をどこで買ったかなど、秘密にするような話ではない。
「……」
「……」
ベルデとディアバスは、無言で顔を見合わせた。




