22. ミリス編⑦ 帰宅
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
夕方、ベルデが帰宅すると、ペルラとディアバスは揃って居間にいた。
「おかえりなさい、お兄様」
「ただいま」
ベルデはコートを脱ぎながら、二人の顔を見比べた。
「何だ。今日は二人とも、ずいぶん待ち構えてるな」
「お兄様に話があるの」
「ほう」
ディアバスがベルデから剣を受け取り、いつもの場所へ置く。
「ミリス様が今日、いらっしゃいました」
「ああ。言っていたな」
ペルラが少し言いにくそうに続けた。
「アルマンディン駐留軍に、異動を希望するつもりなんですって」
ベルデの手が一瞬止まった。
「ミリスが?」
「はい」
ディアバスが答える。
「最近、決意を固めたそうです」
「へえ」
ベルデは意外そうに眉を上げ、それから小さく笑った。
「侯爵家の跡取り息子が、ずいぶん思い切ったことを考えたな」
ペルラはまだ不安そうだった。
「お兄様……」
「ああ。分かってる」
ベルデは軽い調子のまま、ペルラを見る。
「アルマンディンにお前を連れていくつもりなら、この話はなしだ」
ペルラはほっとしたように息をついた。
「やっぱり?」
「当たり前だろ」
ベルデは笑った。
「遠い。危ない。それで十分だ」
ペルラがうなずいた。
二人の横で、ディアバスは黙ってチラッと天井を見た。
――遠い。それだけでも駄目なのか。なら、バサルクは……?
そこまで考えて、やめた。
ベルデがキッパリ言った。
「今からアルマンディン勤務を希望する男と、わざわざお前を婚約させる必要はない。
そこは俺が話す」
ベルデは、少し大げさに胸を張った。
「後はお兄様に任せろ」
ペルラが笑った。




