16. ミリス編① シチュー
ペルラは、先日の舞踏会で兄のベルデにミリスを紹介され、その後も何度か会っていた。
今日も二人でカフェへ出かけ、夕方になって帰ってきた。
ディアバスが出迎える。
「おかえり。どうだった?」
「楽しかったけど、疲れた。
疲れたけど、楽しかった」
ペルラは椅子に座り込んだ。
「座る前に、手を洗え、うがいをしろ」
「え〜」
ペルラはよろよろと立ち上がると、洗面所に消えていった。
ディアバスは台所に戻る。
夕食作りの途中だった。
手を洗ったペルラが台所に入ってきた。
「今日は何?」
「シチュー」
「いいね、おいしそう」
「皿を出してくれ」
「はーい」
ディアバスが鍋のシチューをかき混ぜる。
後ろからペルラが言った。
「私がミリス様と結婚したら、ディアはどうするの?」
「急だな」
「ミリス様は、ディアも一緒にヘーゼル侯爵家に来たらいい、って言うの」
「まあ……無理だろうな」
ミリスはおそらく、ペルラが慣れない家で不安にならないようにと考えたのだ。
実家から慣れた従者を連れてきてもいいという善意だ。
だが、ディアバスの正体を知った上で同じことを言えるはずがない。
ディアバスはバサルク王国の王子だ。
そんなことを言えば、ヘーゼル家の方がムーンストーン王家とバサルク王家から正気を疑われる。
それに、ペルラが結婚した後まで、今と同じように自分がそばにいるというのも、何となく妙な気がした。
「ねえ、かき混ぜ過ぎじゃない?」
ペルラが皿を持って立っていた。




