134. 【閑話】散歩
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
夜もだいぶ更け、王都の通りには人影がなかった。
ジュニパーは、ときどきこうして夜の王都を歩くのが好きだった。
街灯だけが、石畳を照らしていた。
ジュニパーは、ひとりでゆっくり歩いていた。
角を曲がると、閉店したレストランの裏口が見えた。
脇に置かれたごみ箱から、野菜くずが少しこぼれていた。
ジュニパーは足を止めた。
輪切りの玉ねぎ、パプリカ、オクラ。
どれも中心から外へ向かって、形が規則正しく広がっている。
ビーツのピンク、かぼちゃの黄、なすの紫。
ブロッコリーは、小さな房が同じ形を繰り返しながら集まり、ひとつの大きな形をつくっていた。
しばらく見てから、また歩く。
少し先には、ムーンストーン王立軍に属するアルマンディン駐留軍の王都本部があった。
その外れに、細長い巨大な物体が横たえられていた。
アルマンディンから持ち帰った戦利品だった。
馬車二台分ほどの長さがあった。
先端へ向かってなめらかに細くなっていた。
外装には継ぎ目が一つもない。
アルマンディン大陸王国では、これを空へ打ち上げ、雨を降らせていたという。
内部を調べるため、ムーンストーンへ運ばれた。
だが、継ぎ目のない外装は、どうしても開けることができなかった。
その後、アルマンディン大陸王国は敗戦とともに崩壊した。
アルマンディン大陸は敗戦後の混乱に陥り、その技術も失われていった。
今も、中がどうなっているのか分かっていない。
ジュニパーは、その滑らかな曲線を眺めた。
その物体を下から支える金属の台の裏に、何かがついている。
ジュニパーは少しかがんだ。
蛹だった。
見ていると、蛹の表面に亀裂が入った。
やがて、裂け目から蝶が姿を現した。
折りたたまれていた羽が、みるみる広がっていく。
明るい青。
その中を走る、細い銀色の筋。
羽の翅脈がつくる模様は、左右でよく似ているのに、まったく同じではない。
羽が大きく開いた。
蝶は、夜の空へ飛んでいった。




