128. 海の離宮編(38) 下賜
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
コンミフォラ卿の海上油田保全作業が終わり、コンミフォラ家の船は明日バサルクを発つことになっていた。
ペルラとディアバスとベルデは、その船に同乗させてもらい、ムーンストーンへ戻る予定だった。
出発前日の朝。
ベルデは、バサルク王宮の謁見の間にいた。
正面には、水晶と金を連ねた簾が垂れていた。
その向こうに、オーニチェがいた。
ベルデは定められた位置まで進み、深く頭を下げた。
「ベルデ・ベトーラ。顔を上げよ」
オーニチェの声が響いた。
「はい」
ベルデは顔を上げた。
「明日、ムーンストーンへ発つと聞いている」
「はい」
オーニチェは、少し黙ってベルデを見ていた。
「我が弟ディアバスと、その妃ペルラを頼む」
ベルデは、再び深く頭を下げた。
「はい。承りました」
オーニチェが傍らへ視線を向けた。
控えていた臣下が一礼する。
「バサルク王家より、ベルデ・ベトーラ殿へ下賜の品にございます」
別の臣下が、一振りの短剣を捧げ持って進み出た。
金の鞘に、太い幾何学模様が連なっている。
角張った大粒の宝石が三つ、間を置いて嵌め込まれ、その周囲をいくつもの小さな石が取り巻いていた。
柄にも金の装飾が施され、光を受けるたびに宝石が鮮やかに輝いた。
「国王陛下御所有の短剣にございます」
臣下はベルデの前まで進んだ。
差し出された短剣を、ベルデは両手で受け取った。
ずしりと重い。
ベルデは短剣を手にしたまま、深く一礼した。
「ありがたく頂戴いたします」
きらめく簾の向こうで、オーニチェが静かに頷いた。




