126. 海の離宮編(37) 丘
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
王宮の船着場を離れ、船は水路を進んだ。
巨木の間を抜けるうちにいくつもの川が合流し、少しずつ川幅が広くなっていく。
集落を通り抜ける。
ディアバスは船の上から、初めての景色を眺めていた。
河口の先に、古い港が見えてきた。
かつてはアルマンディンから大型船が入り、多くの人と荷が行き交った港だという。
今、広い船着場に並んでいるのは、王家と今日の儀式に立ち会う貴族の船くらいだった。
一行は船を降り、港町の裏手にある丘へ向かった。
長い草が風になびく丘には、古い石垣が残っていた。
石垣はところどころ崩れ、積み方の違う石が幾重にも連なっていた。
アルマンディンからの侵攻に備え、石垣は何度も築き直されてきたという。
一行は、その横を通って丘を上った。
丘の頂、強い風の中に、大きな水晶の結晶が立っていた。
いくつもの透明な結晶が重なり合い、その先端は頭上高くまで伸びている。
一番長い水晶の先には、アルマンディンのどこか、王家の祖先が暮らしていた土地があるという。
ディアバスは、水晶の指す先を見た。
見えるのは、海と空だけだった。
そのはるか先に、アルマンディン大陸がある。
◇
丘には父王とオーニチェ、ベルデのほか、王家に近い家の者たちが集まっていた。
皆、色鮮やかな正装をまとっている。
オーニチェが前へ出た。
「森と地の光は、我らの内に在る」
王家の一員として国を背負う者が、この丘で剣を受け取る。
「ディアバス・バサルク」
呼ばれて、ディアバスは前へ出た。
オーニチェが短剣を差し出した。
父が一つの鋼を二つに分け、二人の息子のために作らせた短剣だった。
鞘と柄には王家の紋章が刻まれ、金と銀、濃い紫の宝石と水晶が飾られていた。
ディアバスは両手で受け取った。
成人王族の儀式が終わった。
◇
続いて、ディアバスとペルラの結婚式が始まった。
婚礼の音楽が流れ、ディアバスは顔を上げた。
丘へ続く道の先に、ペルラが現れた。
青緑と紫、濃い桃色を重ねた婚礼衣装には、金糸の刺繍が施されていた。
ペルラが一歩ずつ近づいてくる。
やがてディアバスの隣に立った。
婚礼の音楽が止んだ。
オーニチェが再び前へ出た。
「ペルラ・バサルク」
ペルラが前へ出た。
「森と地の光は、我らの内に在る」
オーニチェは頭飾りをペルラの髪に載せた。
金と銀、紫の宝石と水晶が、日の光を受けて輝いた。
ディアバスは、ペルラへ手を差し出した。
ペルラの手が重なる。
海から強い風が吹き上がり、二人の衣を大きく揺らした。
ディアバスは、ペルラの手をしっかりと握った。




